東急建設は、通常の台車では運搬できない重量物をあらゆる方向に運搬する「PC桁セグメント運搬台車」を開発した。独自の技術で、従来は走行機構に負荷がかかりすぎるため、運搬できなかった狭い場所でも、重量物を運び込むことが可能になる。新京成線の約3.3kmをPC桁で高架化する工事に導入し、大幅な工期短縮が実現した。
東急建設は、PC桁など通常の台車では運搬できない重量物をあらゆる方向に運搬する技術を開発した。この技術であれば、従来は走行機構に負荷がかかりすぎるため地上運搬できなかった狭隘(きょうあい)な敷地にも、重量物を運び込める。「新京成線(鎌ケ谷大仏駅〜くぬぎ山駅間)連続立体交差化工事第一工区」で活用し、約5カ月間の工期短縮を実現した。
同工区は、駅間約3.3km(キロ)をPC桁により高架化する工事。施工区間周辺には家屋が密集し、借地可能な用地が限られている。狭隘に入り込んだ道路や土地で、運搬経路上の高さにも制限があるなど、最大27t(トン)、長さ5.6m(メートル)、高さ2.4mの重量・規模を持つPC桁セグメントを運搬することは困難とされていた。
同社では実際に、一般汎用機での運搬を検討したが、条件に適合して運搬できる台車がなかった。そこで自社開発の重量物運搬台車を応用し、開発を進めることとした。
同社が特許取得の独自技術により、開発した台車は「PC桁セグメント運搬台車」。24輪硬質ゴムタイヤを装着した既存の重量物運搬台車を改良。台車の定格積載重量は30tで、全長は5.4m、幅2.4m、高さは1.37m。荷台最小高さは0.95mで、PC桁セグメントを積載できる条件に適合させた。
さらに、今回開発したアウトリガージャッキによる操舵機構を搭載し、重量のあるPC桁セグメントを積載したまま曲線半径10mのカーブを転回できるようにしている。これまで、重量物を積載した状態ではカーブ区間の操舵角変更には負荷がかかり過ぎたが、台車本体フレームの四隅に取り付けたアウトリガージャッキ(10t、300mmストローク)で車体を浮かし、転回することで、操舵角変更時の負荷を低減した。
また、PC桁セグメント運搬台車に積載した状態で、運搬台車ごと直角方向に移動できるように改造。この横移行機構は、運搬台車周囲に鉄車輪装着フレームを固定し、そのフレーム上に運搬台車のアウトリガーをジャッキアップして載せ、鉄車輪装着フレームを横移動させること方法を採用。1t用ウインチ2台を使用してけん引し、横方向への移動を実現させた。
現場導入に向けては、30tウェイトによる走行試験などを繰り返した。走行時の警報音、回転灯などの安全設備を装備することで、安全性を徹底した。東急建設では、PC桁セグメント運搬台車は「現場状況に合わせて改良を施すことで、さまざまな工事現場に応用できる」として、施工現場の生産性向上や工期短縮に有用だとしている。
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