鹿島建設は、騒音を低減させた発破により、新設杭の余分に出た杭頭を処理する「カット&クラッシュ工法」を開発した。第三者機関の性能評価を取得するとともに、都内で施工中の新築工事に適用し40本の杭頭処理を行った。騒音低減につながったことに加え、ハンドブレーカによる作業と比較して作業工程を2割削減できたという。
鹿島建設は、2011年に開発した微少発破による既存基礎の解体工法「鹿島マイクロブラスティング(MB)工法」を応用し、瞬間的な破砕で新設杭の杭頭を処理する「カット&クラッシュ工法」を開発した。日本建築総合試験所の性能評価を取得するとともに、都内で施工中の「LIXIL WING新棟計画新築工事」に適用し、合計40本の杭頭処理を完了。作業工程の短縮など工法の有効性が確認された。
新築建物の杭を造成する際、杭コンクリートの均質化を図るため、800〜1000mm(ミリ)程度余分に打ち上げて余盛りをつくり、コンクリート硬化後、この余盛り部分を砕いて除去する作業(杭頭処理)が必要とされる。
ハンドブレーカなどを用いた除去作業では、恒常的な騒音が長期間発生する他、粉じんが発生し、作業環境も悪化してしまう。また、あらかじめ存置部と余盛部の間に薬剤をセットして、硬化後にひび割れを生じさせ、余盛部を上から引き抜いて除去する方法もあるが、大型重機が必要となるため、適用が難しい。
そこで、鹿島建設と、産業技術総合研究所、カヤク・ジャパンは、共同開発した微少量の爆薬を用いて既存構造物を局所的に発破する「鹿島MB工法」を応用することで、杭頭処理を短時間で効率的に行う工法の研究を進めてきた。
開発されたカット&クラッシュ工法は、従来の杭頭処理作業では恒常的に発生していた騒音を発破時の一瞬だけにし、周辺の環境に配慮している。
作業手順は、まず杭体存置部と余盛部を水平切断し、次に余盛部を破砕する2段階の発破を瞬時に行う。水平切断では、存置部と余盛部の間に外側から中央に向かって穿孔して、非火薬破砕剤を装填。非火薬のため、発破時の衝撃波が生じず、杭体存置部に損傷を与えることも無い。余盛部の破砕では、あらかじめ鉄筋カゴ内側に、らせん状の管を仕込み、コンクリート打設後、らせん状の管と鉛直に穿孔した孔に、それぞれ爆薬を装填する。
0.05秒の間を置いた2段階の発破後、余盛部は人頭大にまで破砕されるが、防爆シートによって養生しているため、粉じんも飛び散らない。
日本建築総合試験所による第三者性能評価では、杭の試験体を作製し、カット&クラッシュ工法によって余盛部を破砕した後、杭体存置部のコンクリート圧縮強度やクラックの有/無、主筋の引張強度や付着強度などを検査した。いずれにも問題は見られず、杭体存置部の健全性を確認。2017年10月に性能評価を取得したことで、カット&クラッシュ工法による杭の品質が客観的に評価されたことになる。
その後、現場での適用では、東京都江東区で施工中のLIXIL WING新棟計画新築工事に導入。工事敷地は住宅街にあり、φ2.0〜2.5m(メートル)の杭40本全てに適用した結果、発破時の一瞬の騒音は発生したが、全体的な騒音は大幅に低減された。また、従来のハンドブレーカによる作業と比較して、作業工程を2割以上も削減できたという。
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