「住宅・ビル・施設Week2018」で東京急行電鉄 取締役 常務執行役員の高橋氏が講演。現在進められている渋谷エリアの再開発プロジェクトの展望について語った。
住宅、ビル、公共施設、商業施設などあらゆる建築物を対象とした建築総合展「住宅・ビル・施設Week2018」(2018年12月12日~14日、東京ビッグサイト)で、東京急行電鉄 取締役 常務執行役員 都市創造本部長兼渋谷戦略事業部長の高橋俊之氏が講演。「渋谷における東急の再開発事業」をテーマに、渋谷駅中心地区で東急が進めている再開発事業の概要を説明した。
高橋氏はまず渋谷の街が持つ強みと課題について述べた。渋谷には8つの路線が乗り入れる国内第2位のターミナル拠点(乗降客数約320万人/日)で、都内や羽田空港からのアクセス至便な便利性を有している。さらに東急線沿線の住民は540万人に上り、比較的高所得者の割合が高く、自由が丘、二子玉川、中目黒、横浜など「住みたい街」に選ばれる駅周辺地域も多い。また、産業面でもIT企業の集積が都内の中でも際立っており、クリエイティブ・コンテンツ産業の事業所数も都内で最多という。観光拠点としても注目され、特に米国、フランス、ドイツなど欧米諸国からの訪日客の訪問先ランキングで1位としている。
一方、課題としてインフラの脆弱(ぜいじゃく)性を挙げる。具体的には、駅施設の老朽化や乗り換え、乗り継ぎの不便さが見られた。また、駅前広場における歩行者の滞留空間の不足、オフィス床の不足(特にCグレードオフィスの絶対数が少ない)、宿泊施設の不足なども課題だ。
こうした中で、東急東横線と副都心線との相互直通運転がきっかけとなり、渋谷駅周辺の大規模再開発への機運が高まった。そして現在、国、都、鉄道事業者、地元など官民が連携した再開発事業が進められている。
渋谷駅周辺地域(139ヘクタール)は、特定再生緊急整備地域に指定され、国家戦略特区、アジアヘッドクォーター特区などの指定を受けている。計画としては、「世界に開かれた生活文化の発信拠点『渋谷』のリーディングコア」を将来像として、それを実現するために渋谷の発信、都市回廊の創出、安心安全な街、渋谷らしさの強化など7つの戦略が立てられた。
渋谷駅周辺の基盤整備計画としては、東急百貨店東横店、旧東横線の渋谷駅ホームを解体し、敷地は土地区画整備事業によって再販し、駅ビルの敷地は南側の国道246号側に寄せて成形する。東横線の地下化を皮切りに今後、旧東横線ホームの跡地空間を利用して、現在の山手線ホームの隣に埼京線のホームを並立化する。そして銀座線のホームは、東口広場の上空に移動し、乗り換え動線の正常化、ホームの拡幅を進める。駅前広場は拡張するのとともに歩行者と車両の動線を分離して機能的に配置する。「これらの整備を各事業者が連携して進めていくことで、人とクルマの動線を整備し、分かりにくいといわれる渋谷の動線を大きく改善する」(高橋氏)方針だ。
この他、渋谷ヒカリエをはじめ渋谷キャスト、渋谷ブリッジ、渋谷スクランブルスクエア(渋谷スカイ、渋谷キューズ)などのプロジェクトにより、人の流れが今まで以上のにぎわいを創出し、さらに新たなカルチャーやサービスの発信拠点になることを目指すとした。
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