経済産業省 関東産業経済局と山九は、高所作業安全化に関しての技術公募を開始した。山九が行う煙突・鉄塔の点検や工事で、危険を伴う高所での最初に命綱を張る作業をドローンやロボットの技術を駆使して安全化するための共同開発パートナーを募る。
経済産業省 関東産業経済局 精密計測・微細加工分野プラットフォーム事務局のナインシグマ・アジアパシフィックは、山九の高所作業を安全化する技術提案の募集を2018年10月1日に開始した。
精密計測・微細加工プラットフォームは、オープンイノベーションに取り組む大手・中堅企業との共創型のマッチングを促進するために2016年に設立された。創立以降、社会課題を解決する技術探索型コンテストを開催してきた。
現状で煙突・鉄塔工事は、人が実際に高所の煙突柱に登り、煙突柱のデッキから指示鉄塔の主柱にロープを渡して、主柱から主柱へと伝い、四角の主柱全てに親綱を張っている。
今回の公募では、高所で最初に命綱を張る「親綱初期展張」を安全に行える手法を確立することを目的に、共同開発パートナーを選定する。技術提案の締め切りは2018年10月31日。書類・プレゼンテーションの審査を経て、2019年3月までに試作機の開発、同年8月までに煙突での実証実験を行う。
課題解決の技術は、ロボットやドローンによる親綱結束を想定しているが、これらに限定せずに幅広いアプローチを求める。具体的には、結束する付帯設備(タラップまたは階段)、梁(はり)、柱に親綱を結び付ける。十分な結束力があれば、親綱の固定方法は問わないという。
結束に加えて、結束対象の状況をカメラ撮影して、腐食の有無を人が目視確認することも求められる。親綱を結束後は、10〜30m(メートル)程度横方向に移動後、別の結束対象に親綱を結び、ロープを張る。鉄塔の場合はこれを4辺に対して行う。これら一連の作業を“1時間以内”で完了できることが条件として設定されている。
自走型ロボットでは、梁上・柱を移動しながら、両端の結束対象にロープを結び親綱を展張。ドローンでは柱間を飛行しながら、両端にフックを掛けることで親綱を張る。腐食の確認は、小型カメラの搭載または撮影用ドローンで把握することがそれぞれ想定されている。
対象となる煙突は、鉄塔に支持された高さ30〜200mの独立型または複合型煙突。煙突か支持鉄塔には、昇降用のタラップか階段が取り付けられている。同様の煙突は国内に約400本存在するとされる。取り付ける親綱は長さ10〜30m、直径16mm程度のロープおよびフックなどの固定機構で構成。
必須ではないが望ましいとされる技術は、無人で地上より35〜45m(45mでは親綱の重量は9kg)の地点で、親綱の端部をつかんだまま移動できることと、親綱の最終的な取り外しにも対応可能なこと。
提案者の要件は、中小企業、または中小企業を含むチーム。有望な提案者には、山九から200万円程度の費用提供を受け、試作開発の機会が得られる。実機化段階では追加の開発費用を山九が負担することも可能。試作後の共同開発フェーズでは、経済産業省の補助金などの活用機会が与えられる。実用化後には、技術ライセンスの可能性もありうる。
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