日本列島を立て続けに襲う大雨と地震。これに伴い甚大な被害をもたらすのが、土砂崩れ・地すべりなどの「土砂災害」だが、その災害状況の計測も2次災害のリスクから困難を極める。そこで、現在活躍の場を広げているのが「UAVレーザー測量」である。最短で即日にフライト計測し、中一日で測量精度1/500に基づく地形データの提出が可能だ。“西日本豪雨”の土砂災害状況を調査するテラドローンの関隆史、河越賛の両氏に話を聞いた。
天災相次ぐ日本列島。2018年7月には死者220人を超えるなど平成に入って最悪の豪雨災害となった“西日本豪雨”が発生、翌8月には関西国際空港を閉鎖に追い込んだ台風21号が直撃、さらに9月に入ると国内初のブラックアウト(大規模停電)を起こした北海道胆振東部地震が襲った。いずれも懸命な復旧作業が各方面で進められる中、天災で避けては通れない「土砂災害」の被害状況を迅速に計測し、その後の復旧工事も効率化する「UAVレーザー測量」が被災現場で活躍している。
国からの業務委託を受け、西日本豪雨における土砂災害状況の計測を続ける、テラドローン事業開発部責任者・関隆史氏、技術開発部責任者・河越賛氏に、被災地での調査内容、UAVレーザー測量の手法、これまでの取り組みと今後の業務展開について話を聞いた。
――西日本豪雨におけるUAVレーザー測量の活躍
2018年7月の西日本豪雨では、一通りの人命救助が終わった7月23日ごろから、国から業務委託を受けて現地入りし、レーザー計測による土砂災害の被災状況を計測した。まず最も被害の大きかった広島県内のダムから着手。ダム内に滞留した土砂の範囲や量、土砂崩れのあった周辺の現況を空中から調べた。
調査にあたっては、既存マップに被災で生じた高低差を加味してドローン(UAV)のフライトプランを組み、それをもとにUAVを自動飛行、レーザーによる地形計測を1時間ほどで完了させた。機体に搭載したカメラとレーザーの解析結果より、3次元点群データと等高線マップを作成した。
通常、計測後のフィルタリング処理などに1週間あまりの時間を費やすが、非常に緊急性を要することから社員総出で作業し、2日ほどで詳細な計測結果を提出することができた。等高線マップに色付けし立体地図とすることで、3次元表現により被災前との状況変化を明確に示した他、レーザー計測によりダム内にたまった土砂の体積量も割り出している。
この結果をもとに、土砂の流出を防ぐ「砂防ダム」の設計が進められるため、一日でも早く納品したいと考えていた。同ダム以外にも、現地入りから1月あまりで広島や岡山を中心に約10カ所のレーザー計測を終えたものの、計測が求められる箇所は多く残されている。引き続き、一日も早い復旧に寄与できるよう迅速な対応をとっていきたい。
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