竹中工務店は、BIMモデルとICTを活用して、地中の支持層を3Dモデル化し、杭工事の設計・施工を管理するシステム「ANAGO(アナゴ)」を開発した。愛知県大規模展示場の建設工事に初導入され、設計時間は8割削減し、施工面では省人化につながったという。
竹中工務店は、作成したBIMモデルをベースに3Dモデル化し、杭の長さを可視化する設計と施工の両面で活用できる「ANAGO」(ANAlysis for Geologic Optimum)を開発し、愛知県の大規模展示場の杭工事に初適用した。
3Dモデルの作成に当たっては、BIMソフトウェア「ArchiCAD」と3次元CADソフトウェア「Rhinoceros」およびプラグイン「Grasshopper」を使用した。
日々追加されていく、ボーリング調査や実際の杭施工から得られる支持層の深さや傾斜のデータを3Dモデルに反映させ、可視化。これから打設する杭の支持層までの長さを自動的に判別する。
杭の長さの判別はまず、ボーリング試験結果をベースに起点から終わりまでの想定支持層ラインの深さを設定する。想定した支持層に対して杭長を決め、1本目の杭を施工して得られる支持層深度の情報から支持層ラインを修正。長さが足りないと判断された杭は赤く表示される。
実際に導入された大規模展示場建設プロジェクトの杭工事では、傾斜が大きい支持層へ、3054本の杭打ちを行う必要があった。そのため、100本程度のボーリング調査を行い、設計者が支持層の深さを判別する分布図を作成して、全ての杭の長さを決めなければならなかった。しかし、多量の杭に対し、ボーリングの調査数が少ないため、複雑な支持層の3次元形状を推定するのは難しいとされていた。そのため、施工時に地中の支持層の深さや傾斜が設計と異なった場合は、杭を再製作しなければならないなどの工期延長も想定されていた。
ANAGOの適用により、これらの課題を解決。設計作業では、支持層分布図の作成と杭の長さの検討作業が自動化され、設計作業の時間が80%削減された。施工段階では、各杭の施工により得られた実際の支持層までの深さを追加して、支持層の3Dモデルを日々更新。最新かつ詳細な地盤の情報に基づく杭施工管理が可能になった。今後打設する杭の長さもタイムリーに変更できるため、2.8台/人だった杭打機の施工管理を、4.0台/人へ省人化し、杭の発注・施工管理の効率化が実現された。
また、ボーリング調査だけでは、なだらかな傾斜と想定されていた支持層形状も、杭施工結果を追加することで、中央に急激な傾斜があることも分かったという。
愛知県大規模展示場建設工事の概要は、S造2階建て、延べ床面積約8万9900m2(平方メートル)。工期は2017年9月〜2019年8月。設計・施工は竹中工務店、監理は日本設計が担当した。
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