清水建設は、トンネルの掘削面の崩落災害の根絶を目的に、崩落の予兆を的確に捉え、事前に作業員に退避を促す、「切羽崩落振動監視レーダーシステム」を開発した。
清水建設は、ICT、IoT、AIなどの最新技術を活用し、トンネル現場の生産性と安全性の飛躍的向上を図る次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の要素技術として、切羽崩落落振動監視レーダーシステムを開発した。
システムは、物体表面を面的に探査しながら、目視では確認できない微細な振動挙動を捉える振動可視化レーダー技術を用いて、切羽全面をモニタリング。基準値を超える変位量や変位速度を検知した場合は、退避を促すアラートを発報する仕組みだ。
システム構成は、76〜77GHzの周波数帯域を使用するミリ波レーダーとデジタルカメラが一体となった測定システム、システムコントロール用のPC、記録用HDDから成る。
測定システムの核となるミリ波レーダーは昨今、自動車の自動運転分野で民用化が進むセンサー技術。塵(ちり)や霧などの微粒子の粒径より、大きな波長を持つミリ波の特性から、トンネル現場のような見通しの悪い環境下でも直進性・透過性が損なわれない。
切羽を常時モニタリングする際は、レーダーと切羽の間に、ミリ波が透過しない施工機械や作業員が入り込むことが避けられず、反射波の影響で切羽の変位データに異常値が検出されてしまうことがある。こうした異常値をノイズとして除去するフィルター機能を組み込むことで、切羽全面の常時モニタリングが可能になった。
実際の運用では、レーダーで切羽の変位を面的にサーチしながら、0.1mm(ミリ)単位で振動挙動を捉え、地山応力の状態変化や、掘削した切羽面に浮いた状態でとどまっている岩塊などの振動状況を監視。切羽の変位状況は、PC上にリアルタイムで表示される変位量・変位速度の面的分布図で確認でき、切羽のライブ映像に重ね合わせて可視化することもできる。崩落予兆を捉えた際には、フラッシュライト、警告音、モニター表示で、注意・警告・退避の3段階でアラートを発報する。
清水建設では今後、山岳トンネルにおける切羽崩落災害の撲滅に向け、システムの現場適用を進めつつ、予兆条件をデジタルデータとして蓄積することで、将来の無人化施工技術の構築につなげていく。同社では、2020年までにシミズ・スマート・トンネルの完成を目指している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.