パナソニックがインフラ点検事業でいち早く展開している「水中ROV点検サービス」は、今秋にも新機能を追加し、リアルタイムでダム水中の点検動画を鮮明化して、損傷箇所の把握を当日その場で目視可能にする。2018年7月18日〜20日に東京ビッグサイトで開催された「インフラ検査・維持管理展」で明らかにした。
パナソニックは、各種インフラ設備の点検保守サービスを体系化し、「Smart Image Sensing(スマートイメージセンシング)」と銘打ち注力する。2018年4月には「4K画像活用構造物点検サービス」「インフラ設備撮影サービス」をリリース。現在、新たに「インフラ点検錆診断サービス」も構想中だ。
Smart Image Sensingは、同社の強みであるロボットや4K画像といった映像デバイスと最新の画像処理技術によって、インフラ点検の測定結果を“可視化”し、データの収集・管理・提供を行うものである。大別すると、「水中ROV点検サービス」「4K画像活用構造物点検サービス」「インフラ設備撮影サービス」「ドローン活用リアルタイム巡視点検サービス」の4つのソリューションで構成する。
「水中ROV点検サービス」は、ダム水中部を対象としたもので、独自の自律制御技術により水中でのブレ・揺れを抑え、水深は200m(メートル)まで対応する。操作・検査用のカメラ2台が撮影と合わせて位置情報も記録。水中まで届かないGPSの代わりに、ジャイロセンサーとスラスター情報(スクリューの回転数など)から正確な計測地点を割り出している。これにより、ダイバーなど人の手では困難とされたダム水中部の網羅点検を実現した。
撮影データは、「画像鮮明化技術」により、濁度10程度の環境下での映像でも、浮遊物などのノイズを除去し、視認性の高い鮮明な映像記録として提供する。加えて、損傷箇所の正確な位置とサイズを測定・抽出した「俯瞰マップ」も生成している。販売開始から2年が経過し、これまでに15以上のダムで採用実績を持つ。今秋には、クライアントの意向を受け、リアルタイムで鮮明化された動画を確認できるサービスも提供予定。これまで1カ月ほど要していた損傷箇所の把握が当日その場で目視可能になるという。
「4K画像活用構造物点検サービス」は、道路や鉄道の橋梁を対象としたもので、振動の幅や方向などのデータを可視化する。同社特許の画像解析技術により、4Kカメラの高画像画質をフル活用。一例として、30m幅の鉄橋を1つのフレームに収めた場合、振動の幅は1〜0.1mm(ミリ)の範囲内で割り出すことが可能だ。販売開始は2018年4月。
同時期にリリースされた「インフラ設備撮影サービス」は、電力柱や電信柱といった道路隣接設備の点検業務を効率化する。車に、カメラ・GPS・録画装置をセッティングすれば、担当者が一人で点検先を運転して周るだけで済み、従来のように運転者と確認者の二人一組で巡視する必要も無くなる。撮影後は画像を「専用マップシステム」に取り込んで確認。トライアル版として、画像抽出AIによる異常自動検知も提供中だ。
現在、新たなシステムとして「インフラ点検錆診断サービス」を企画検討中。これは同社の画像解析技術とAI技術を活用したもので、建造物の腐食具合を可視化する。具体的には、錆の“色合い”について、顧客・案件ごとに特化した解析用エンジンを作成し、点検現場でタブレット端末などによる錆の自動検出を実現するという。
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