最近では外資系企業だけでなく、官公庁やスタートアップ企業でも広がりを見せつつある「コワーキング・スペース」。JLLは、都内のオフィス市場でのコワーキング・スペースの動向を調査したレポートを公表。2018年は既に6月末時点で、2017年の延べ床面積の倍増となり、急速に拡大していることが明らかになった。
総合不動産サービス大手のJLLは2018年7月5日、東京オフィス市場における固定席の無いフリー・アドレス制オフィス(コワーキング・スペース)の現状を分析したレポート「東京オフィス市場で拡大するコワーキング・スペース」を発表した。
レポートによると、東京オフィス市場で、コワーキング・スペースは2017年以降急激に拡大しているとされる。延べ床面積は、千代田区、港区、渋谷区、中央区、新宿の5区で、2017年末時点で1万6902m2(平方メートル)に対し、2018年6月末時点で3万2624m2と約2倍に増加。2018年には累計で約6万2608m2にまで拡大する見通し。2000年代は個室型のサービス・オフィスが主流だったが、5年前よりコワーキング・スペースが広がり、市場が一変してきている様相がうかがえる。
拠点当たりの平均面積も2018年は急速に増大。コワーキング・スペースの平均面積は、これまで1000m2程度だったが、ニューヨーク発コワーキングスペース「WeWork」の日本進出を背景に、2258m2にまで拡大している。席数も大幅に増加傾向にあり、900-1900席のレンジで展開されている。
直近では、賃貸市場でのコワーキング・スペースのリーシング取引が目立っており、東京都心5区の総取引面積に対し、2017年通年で3%、2018年は34%に達しているという。
また、東京のAグレードオフィス市場は、2020年に向け、未曽有の新規供給が控えている。特に丸ノ内、大手町、虎ノ門、品川、渋谷などの再開発物件で高グレードのビルが供給されるため、より多くのコワーキング・オペレーターが東京都心5区に新規拠点を展開すると予測している。
コワーキング・スペースの平均募集利用料は、2018年7月時点で1席当たり9万1950円/月と前年の平均募集利用料7万8414円/月から、16%幅と大幅にアップ。より築年が浅く、高グレードの東京都心(主に日比谷、丸の内、八重洲)に所在するビルでの開設拡大を背景に利用料が上昇。一方で、築年が古いビルや郊外にあるビルのような1席当たり、平均募集利用料3万円/月を下回る拠点の進出は減少している。
現状では、金融、IT、食品、アパレル、スタートアップ、自治体などのさまざまな業態で、コワーキング・スペースの利用は拡大し続けている。2018年後半以降もよりコミュニティー指向が重要視され、コワーキング・スペースの拡大および需要が継続し、オペレーター企業とオフィスビルオーナーの双方が新規拠点を増加させると予測。東京では今後数年にわたりAグレードオフィスの大量供給を控えており、空室率の上昇が懸念されていることから、利用者獲得がより一層重要になり、利用企業と強固な関係を持つオペレーターが有利と考えられる。また、政府による働き方改革の推進により、東京市場におけるコワーキング・スペースは今後一段と拡大すると分析している。
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