福岡県、国立研究開発法人建築研究所、日本都市計画学会都市構造評価特別委員会、都市の姿をさまざまな角度からGoogle Earthで見ることができるウェブサイト「都市構造可視化」を公開している。近年、多くの自治体が人口減少時代でも持続可能な都市構造を構築するため、地域に即した都市の状況を分析する試みを行っている。2018年6月30日に設立されたコンパクトなまちづくり推進協議会で、自治体関係者向けにデモンストレーションが行われた。
コンパクトなまちづくり推進協議会は2018年6月30日、東京・港区の発明会館ホールで設立総会を開催した。設立時の会員は市区町村の一般会員が234自治体、都道府県の特別会員は47自治体で構成されている。
コンパクトな街づくりを推進するための「立地適正化計画」の取り組みでは2017年末時点で116都市が計画を公表。270近い都市が検討に入っており、これまで2816地区で実施されているというが、現実に計画・事業の策定・計画にあたってはさまざまな課題が生じている。効果的なまちづくりの実現に向けて、協議会内では先行して計画を策定した自治体の状況などを参考に、情報の共有を行い、これからの施策に反映させる。また、効果的な計画の策定・事業実施に向けた政策提言を行うことなども視野に入れている。
設立総会では、国土交通省 都市局 都市政策課 企画専門官・赤星健太郎氏が、コンパクトな街づくりを進める上のツールとして「都市構造可視化計画」のデモンストレーションを行った。2018年の骨太方針やまち・ひと・しごと創生基本方針2018などで、3D地図やVR技術といった新技術を用いた「i-都市再生」の必要性が提言されている。
i-都市再生を活用した都市構造の可視化は、「都市構造可視化ウェブサイト」で展開されており、ネット環境があれば誰でも、全国の街の比較や時間経過による変化などを一目で把握できる。ベースはGoogle Earthで、この上に人口や交通量などの各種データをメッシュで表示する。ある1点で人口が減っている場合には、ストリートビューで確認することで、空き家が増えていることや道路インフラの接続がなされていないといった問題を確認することもできる。
赤星氏は「都市構造可視化は10年前に始まったが、これまでは、国や自治体の公開情報を公開することが難しかった。いまでは幅広いビッグデータを使えるようになり、このサイトは国の施策にも活用されている。コンパクトシティー形成支援のためのキラーツールとして、街づくり関係者間の課題把握、政策立案、合意形成のために活用を促していきたい」とした。
都市構造可視化の主な特長としては、3Dマップで表示されるため、市町村内の小さいエリアで、人口や小売業販売額といったさまざまなデータ分布を可視化できる。地図上で過去から未来までの「経年変化」を簡単に比べられ、都市構造を直感的に把握できる。メッシュの色は、公共交通利用圏、インフラの整備状況、災害危険度などを「色」、人口・小売業販売額などのデータを「高さ」で表現。高さと色で異なる性質のデータを載せることで、人口減少や交通インフラ整備の問題解決のブレークスルーになる。街づくりの際の合意形成やプレゼンといった対外的な資料となることも期待される。
一例として、人口分布(高さ)と津波被災エリア(色)の関係で津波到達時の想定被災者数、小売業販売額の空間分析で1970年の駅前中心から、2000年代の郊外ショッピングモールに小売業の中心が移り変わってきている実態調査などでの利用が想定される。ある都市では、建物調査と、住宅局の空家調査のデータを組み合わせ、空き家率と空き家数が比例・反比例する都市部、山間部、郊外の3パターンそれぞれの特性から空き家対策の本質を知ることにつながったという。
また、公示地価をデータに使うことで、全国の地価を可視化。バブル後には、県庁所在地の地価は軒並み下落し、大都市のみに一極集中している「異次元の東京一極集中」ともいえる状況を国土問題のレベルで捉えることができる。
赤星氏は、「可視化データの事例紹介などを行っていき、将来的な都市構造の議論で活用してもらいたい」と展望を語った。
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