「墜落・転落」防止対策の強化で初会合、厚労省(1/2 ページ)

厚生労働省は2018年5月31日、初開催となる「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合」を東京・霞が関の中央合同庁舎5号館で開催した。

» 2018年06月01日 11時30分 公開
[石原忍BUILT]

 第1回となる「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合」が開催され、当日は、ゼネコン、ハウスメーカー、仮設関連のメーカーや団体、中小の建設業者などが参加し、労働安全衛生法令の改正も視野に入れて、安全な足場や手すりなどの安全対策について話し合った。

「墜落・転落」の死亡事故は2017年に増加

会合主催者の厚労省 労働基準局 安全衛生部長 田中誠二氏=5月31日、霞が関

 建設現場の墜落・転落による死亡災害は、労働安全規則やガイドラインなどの取り組みによって長期的にみると減少傾向にある。しかし、2017年には323人が死亡し、前年を上回る結果となった。このうち、墜落・転落による死亡事故は135人と、4割以上を占め最多。そのため、実効性のある防止対策を講ずることが急務となっている。

 会合は、労働安全衛生法令の改正も視野に入れ、必要な方策を検討することを目的に設置された。2018年度内に5回開催し、最終的な結論をとりまとめる。初回となる今回は、事故発生状況の分析と、今後の論点について検討した。

 事故データの分析では、過去15年間の死亡者数推移が、2004年の594人をピークに年々減少傾向にあり、2016年は300台を切って294人にとどまっていることが示された。しかし、2017年は増加に転じ、323人もの作業員が亡くなっている。死亡事故の形別では、「墜落・転落」が135人で41.8%を占め、最多となった。

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29
死亡災害 548 594 497 508 461 430 371 365 342 367 342 377 327 294 323
墜落・転落 274 260 203 190 207 172 147 159 154 157 160 148 128 134 135
過去15年間の死亡者数(全体、墜落・転落)の推移

 2015・2016年の墜落・転落災害の分析結果では、2年の合計で262件の死亡事故が起き、「屋根・屋上・床上から(作業床あり)」が87件と多かった。その内訳は、「屋根などの端」31件、「スレートなどの踏み抜き」18件、「屋根・屋上・床上などの開口部」14件、「屋上などの端」12件、「その他(屋根材・床材など)」12件。木建住宅の改修と、ビルの改修・解体での屋根・屋上からの落下が多い傾向となった。

屋根の端 31件
スレートの踏み抜き 18件
屋根・屋上・床上の開口部 14件
屋上の端 12件
その他 12件
屋根・屋上・床上から(作業床あり)の落下時87件の内訳

 足場に関連するものは合計で50件。このうち、「本足場」19件と、「一側(ひとかわ)足場」12件で多く、「つり足場」6件、「その他」13件と続いた。

 墜落・転落災害を詳細にみると、落下箇所の高さは、「2〜5m」81件と31%を占めトップ。戸建て住宅での事故が多いことを裏付けるデータとなった。「5〜10m」は76件で29%、「10〜15m」24件で9%。10m以下の建物からの落下が6割という結果だった。

 死亡者の年齢では、50歳以上が半数以上と、高齢化の傾向があり、所属する企業の規模は、従業員数「5人以下」が4割、発注者別だと「民間」が66%で、小規模な民間の建設業者で事故が発生している実態が明らかとなった。

 安全対策では、事故前に多くの場合で安全帯が使用されておらず、足場の「手すり」や「中さん」といった墜落防止設備が設置されていないことが原因となっていることが少なくなかった。建築が進むと、手すりが部材を通す際に邪魔になるため、一度外して再度付け直さずにそのままにしてしまうケースがあることも指摘された。

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