グループ内で工務店を経営している理世化学は、設計図面をスキャンしてなぞるだけで、住宅1棟分を自動積算できる「ズカラカズ(zukarakazu)」を開発した。
理世化学の「ズカラカズ(zukarakazu)」は、積算ソフトウェアとしては十数年ぶりとなる特許を2018年2月23日に取得し、2018年6月から本格的に販売を開始する。2018年5月24日・25日に東京ビッグサイトで開催された「住宅ビジネスフェア2018」の販促・営業支援パビリオンで、プレゼンテーションが行われた。
積算ソフト「ズカラカズ」は、よくある営業ツール用の見積もりソフトとは異なり、建築監理の現場向けに開発された積算ソフト。しかし、建築の知識は要らず、誰でも直感的な操作で使え、書類作成業務の大幅な時間短縮が実現する。
使用できる図面は、CADでデータ化されたもの以外にも、手書きやFAXにも対応。操作手順は、CADデータであればJPEGやPNGなどの画像データに変換し、手書きの図面の場合はスキャンして読み取る。次に図面基準点の位置を2点間の寸法やグリッドの間隔をミリ単位で数字入力して補正。ステップ3で洋室、寝室、LDKなどの間取りを囲んで区画を設定した後は、ドアなどの建具と住宅設備を配置し、外郭・基礎・屋根をなぞれば、各種建築・建材実務に必要なデータが自動的にリスト化され、そのまま見積書や発注書の各種書類が作成できる。
開発コンセプトには、次元が違う積算を同時に行うことと、仮想部材の積算根拠への対応があった。次元とは、0次元(点=固定数量)、1次元(線=周長)、2次元(面=面積)、3次元(空間=体積)を指す。例えばフロアの広さをはじき出すのは2次元で、暖房効率などの空間の計算には3次元の体積計算が必要になる。この次元の違う積算を独自のアルゴリズムにより、図面をなぞるだけで数量を出すことができる。
一方の仮想部材は、図面に描かれていない部材以外の運搬費や確認申請手数料などを部材と見なし、あらかじめ単価などを設定しておくことで、見積もりに自動入力できる。
積算結果は、原価計算、積算見積をはじめ、業者への発注書、実行予算書など、請求関連に関するデータを自動計算して、帳票出力される。外部連携データも自動生成されるので、EXCELなどの外部ソフトとの連携もできる。なお、ソフトウェアのライセンスは、月額制のUSBプロダクトキーで管理する。
展示会場で、グループ代表も務める理世化学の大澤正樹代表は、開発意図について、「グループ内には、年間50棟を受注する工務店があり、建築実務と書類作成のオーバーワークを減らすことが課題となっていた。CADソフトに付随している積算ソフトは、オペレーターを教育する必要があるため、実際には使いこなせないことが多々あった。その点、ズカラカズは、総務や経理担当者でも簡単に扱え、ベニヤ1枚、巾木(はばき)の折り返しまで、材料を1枚1枚高い精度でデータが拾える。日常的に使っている当社では、積算担当者は今や1人のみで、これまで12時間かかっていた書類作成が、わずか1時間で済むようになった」と話す。
また、「国土交通省のステップアップ事業として採択されていることもあり、多くの方に使っていただけるように2〜3年先のバージョンアップも見据えている。先行して2017年10月から販売をスタートし、既に10社で採用されている。今後は、販売代理店と連携しつつ、本格的に販売展開をしていきたい」と展望を語った。
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