三谷セキサンと積水化学工業は、既製杭(くい)を用いた地中熱交換器内蔵既製コンクリート杭「Hybrid Pile MS」を共同で開発した。従来工法と比較すると、工期短縮やコスト削減に加えて、都心部などの狭い敷地においても適用性が向上するメリットがある。
三谷セキサン(福井市)と積水化学工業は2018年1月、既製コンクリート杭(くい)を用いた地中熱交換器内蔵既製コンクリート杭「Hybrid Pile MS」を共同で開発し、このほど特許申請を行ったと発表した。
Hybrid Pile MSは、建築分野では主に中層から高層建築物、土木分野では橋脚等の基礎で用いられる既製コンクリート杭の中空部に、地中熱交換器を設置する工法となる。コンクリート杭の中空部に地中熱交換用の高密度ポリエチレン管を内蔵しているため、杭の建込みと同時に地中熱利用システムを埋設できるという。
再生可能エネルギーとして注目を浴びている地中熱利用は、さまざまな施設および住宅などの空調や、積雪地域の融雪設備への採用が増加している。従来の地中熱交換器の設置工法としては、約50m〜100mまでボーリング掘削した専用の設置孔に熱交換器を設置するボアホール方式が主流だが、同方式は効率よく安定して地中熱を利用できる半面で、熱交換器設置のためのスペースや設置孔掘削工事が必要になる。
また、従来の基礎杭を利用した工法では、ほぼ場所打ち杭での適用となり地中熱交換用の管路が長く取れないことに加え、全て現場施工のため工期の長期化、多くの作業員が必要となるなどの課題があった。
Hybrid Pile MSは、杭長に合わせた管路長の熱交換器を固定した鉄筋かごをあらかじめ工場で作製し、基礎杭の埋設時に杭の中空部に設置する。杭の接続部分は、専用の継ぎ手によって熱交換器を接続する仕組みだ。
これにより従来工法と比較すると、熱交換器設置のための掘削作業が不要となる上、熱交換器を固定した鉄筋かごをあらかじめ工場で作製するため、現場作業の軽減や工期短縮、工事費用が削減できる。また、都心部などの狭い敷地においても基礎杭があれば適用可能であり、岩盤の掘削も伴わないため、低騒音や低振動の施工が可能となる。
本工法の本格展開を前に、両社は実証試験を2回実施。有効長さ1メートル当たりの熱交換量はボアホール方式に比べて約1.5倍となること、実施工に合わせ回転を与えながらの埋設を行った後の熱交換器の確認および水圧試験を行った結果、熱交換器に問題はなく、健全性が保たれていることを確認したという。
両社は2018年2月からHybrid Pile MSの営業展開を行う予定とし、建築物の省エネ対策に有効な手段の1つとして、本工法で社会環境に貢献するとしている。
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