プラズマディスプレイ技術を応用した断熱ガラス、パナソニックが開発省エネビル

パナソニックは、プラズマディスプレイのパネル技術を応用することで、約6mmの薄さで約3cmのトリプルガラスと同等以上の断熱性能を持つ真空断熱ガラスの開発と量産化に成功したと発表した。

» 2017年12月07日 06時00分 公開
[松本貴志BUILT]

開発した断熱ガラスは厚さ約6mmで、約3cmのトリプルガラスと同等以上の断熱性能

 パナソニックは2017年12月、同社のプラズマディスプレイパネル(PDP)技術を応用することで、厚さ約6mmのガラスとして業界最高クラス(同社調べ)の断熱性能を持つ真空断熱ガラスの開発と量産化に成功したと発表した。

開発した真空断熱ガラス(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 今回開発した真空断熱ガラスは、Ug値(ガラス単体での熱貫流率)で0.7W/m2・Kを実現。この断熱性能は、総厚約3cmのアルゴンガス入りトリプルガラスと同等以上になるという。また、薄型化による軽量性もメリットとなり、720×1800mmサイズでは総厚約3cmトリプルガラスが約29kgの重量になるところ、同社が開発した真空断熱ガラスでは約20kgと、約3分の1の重量削減を達成した。

 PDPの動作原理は、真空封着された2枚のガラス間に非常に薄い真空層を設け、この真空層内で蛍光体を発光させることによるもの。ガラスを真空状態に保つためには、真空層内の物質からのガスの発生を抑制しつつ、高真空状態を維持する真空封着材料技術が必要となる。このPDPの開発経験から同社は、真空ガラスパネル製造技術や、気密性を維持する鉛フリー封着材料技術を培ったという。

PDPと今回開発した真空断熱ガラスの構造比較(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 同社はこれらの技術を応用し、真空層内で発生するガスを吸着する薄型ガス吸着剤や、2枚のガラス間に0.1mm程度の隙間を形成する低熱伝導性材料などを新開発。真空層の厚みを0.1mmに抑え、板厚3mmのLow-Eガラスとフロートガラスで真空層を挟み込むことにより、総厚約6mmの真空断熱ガラスを実現した。

 また、独自の工法によって従来製品で必要だったガラス表面の排気孔封止部を廃止し、フラットな製品外観を可能とした。また、ガラス封着材などに鉛を使用していないため、環境面や安全面に配慮した。

今回開発した真空断熱ガラスの端面(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 断熱ガラスは、冷凍・冷蔵ショーケースのガラスドア部材としても用いられるが、従来の複層断熱ガラスを用いた製品では、結露防止のためガラスドア内部を電熱ヒーターによって加熱しており、ヒーターの電力消費が大きいという問題があった。同社が今回開発した真空断熱ガラスでは、結露の発生を抑えることができたため冷凍・冷蔵ショーケースではドア内部のヒーターが不要となり、エネルギー消費を更に抑えることができるという。

 今回開発した真空断熱ガラスは、同社の完全子会社である米国の冷凍・冷蔵ショーケースメーカー「ハスマン(Hussmann)」のコンビニ、スーパー向け屋内用自動ドアのガラスに先行納入を行う。これによって、ディスプレイケースのエネルギー許容量の大幅削減を要求する米国エネルギー省の新規制(DOE 2017)に対応可能になるという。

ハスマン社製品での使用イメージ(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 国内向けの販売開始時期および価格は未定だが、トリプルガラス製品と同じ価格帯に設定できるよう目指すとした。同社は今後、持続可能な社会の実現に向けて、パリ協定などの国際的エネルギー規制の高まりに伴う、国内外の断熱事業への展開を行うとする。

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