清水建設は産総研と共同で、建物向けの太陽光発電を活用した水素エネルギー利用システムの開発を進めている。このほど、福島県にある産総研の研究施設に併設した実証システムが稼働を開始した。
清水建設は産業技術総合研究所(産総研)と共同で、建物付帯型の水素エネルギー利用システムを開発し、2017年6月1日から実証運転を開始した。産総研の「福島再生可能エネルギー研究所(FREA)」(福島県郡山市)内に建設したもので、2018年3月まで実証運転を行いシステムの性能を検証する。同時に清水建設独自のBEMSシステムによる制御技術の確立も目指す。
水素エネルギー利用システムは、太陽光発電の余剰電力で水を電気分解して水素を製造し、水素吸蔵合金に貯蔵する。必要に応じて水素を取り出し、燃料電池で電気と熱を生み出す仕組みだ。
実証運転を開始したシステムは、延床面積1000m2程度の建物利用に最適なシステム構成とし、出力20kW(キロワット)の太陽光発電装置、水素製造能力5Nm3/hの水電解装置を備える。水素貯蔵装置の容量は約40Nm3、燃料電池の出力は3.5kWで、余剰電力を途上する出力10kWの蓄電池も併設する。水素貯蔵装置は産総研が開発した水素吸蔵合金をベースに構築した。これらの機器は、順次容量を増やしていく予定だという。
実証運転では、実際の建物の電力・熱需要データに基づき、清水建設の「シミズ・スマートBEMS」で太陽光発電の発電状況を考慮しながら、水素の製造、貯蔵、放出などを監視し、最適に制御する。2017年6月から約10カ月間運転を行い、制御技術を確立する。
2020年の東京五輪に向けて、国内では水素エネルギーの普及に向けた動きが進んでいる。清水建設と産総研は水素社会に対応できる建物付帯型のコンパクトで安全な水素エネルギー利用システムを開発し、2020年までに建物や街区への導入を目指す方針だ。
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