富士通など3社は、ビル設備の異常検知と状況に応じた作業指示マニュアルの自動配信が行えるビル設備監視システムを構築したと発表した。3社で製品化を進め、2018年中の提供開始を目指す。
富士通と大成、スタディストは、富士通のセンサーデバイスとクラウド型のIoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」と大成のビルメンテナンス業務に関するノウハウ、スタディストのクラウド型マニュアル作成プラットフォーム「Teachme Biz(ティーチミービズ)」を連携させ、ビル設備の異常検知と状況に応じた作業指示マニュアルの自動配信が行えるビル設備監視システムを構築した。
3社では2016年10月13日から2017年3月31日までの期間、郵船不動産の「郵船ビルディング」(東京都千代田区)で、同システムの実証実験を実施し、有効性を実証した。今後はビルメンテナンス業務での効率化とサービス品質の向上に向け、共同で製品化を進める。大成のサービスの一部として、2018年中に提供を開始する予定だ。
大成は今回のシステムにおいてTeachme Bizを活用し、動画や画像を活用するなど熟練度が不十分な作業者にも分かりやすい形式で、設備異常の状態に適合した点検手順や故障時の対応方法に関するマニュアルを事前に作成した。Teachme Bizを使用することでマニュアルの作成時間が従来比で5分の1に短縮でき、マニュアル作成にPCが不要になる。閲覧や共有、マニュアルの改定もより簡単に行うことが可能だ。
実証実験では郵船ビルディング内の空調設備に、富士通アドバンストエンジニアリングが提供するセンサーデバイス「ちょいロガ」を設置し、空調設備の温度や加速度などを計測。IoTシステムで必要なデータを収集、蓄積するクラウド基盤「K5 IoT Platform」に計測結果を集約した。その後、大成のビルメンテナンスのノウハウに基づき設備の故障や予兆を検知する条件を設定し、Teachme Bizは集約されたデータの中で条件に当てはまる異常値を検出する。異常検知後、該当設備の異常内容に応じたマニュアルを設備管理者と現場作業員に自動配信することで、速やかに必要な対応を実施した。
実験の結果、同システムを活用することにより、郵船ビルディング内の空調設備の稼働状況を、約6カ月間の長期にわたってリアルタイム監視することが可能なことを実証したという。設備異常発生時のマニュアル自動配信についても、疑似的に設備故障を検知させるシミュレーションを通して、問題なく実現できることを実証したとしている。
3社は同システムの製品化に向け、より多くの実証データを取得し、機能改善につなげるため、2017年4月25日から大成の本社ビルをはじめ複数のビルで同様の実証実験を開始している。大成は同システムをサービスに組み込むことにより、異常が検知された設備の現場調査や対応方法の検討にかかる時間の削減を図る。
また、マニュアルの自動配信によって熟練度が不十分な作業者でも対応可能な業務を拡大することで、1人の作業者が対応できるビルの面積を現在よりも50%程度増大させられると試算している。顧客に向けても「設備故障の未然防止や、故障時のより迅速な復旧を実現するサービスの提供が可能になる」(3社)とした。
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