建築物の環境性能を評価する認証制度には、さまざまな種類がある。その1つであり、国際的な認証制度として普及が進んでいるのが「LEED認証」だ。本連載では一般社団法人グリーン ビルディング ジャパンのメンバーが、こうしたLEEDをはじめとする「グリーンビルディング認証」の概要や、取得のための仕組みを解説する。第3回ではLEED認証と人に配慮をした建築空間を評価する「WELL認証」における評価項目の重複点について、技術的な側面を交えながら紹介する。
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一般社団法人グリーン ビルディング ジャパン(GBJ)注1のメンバーが「グリーンビルディング認証」について解説する本連載。第3回ではLEED認証と人に配慮をした建築空間を評価するWELL認証における評価項目の重複点について、技術的な側面を交えながら解説する。
(注1)GBJ:一般社団法人グリーン ビルディング ジャパン。LEEDの主体団体であるU.S.グリーンビルディング協会(USGBC)と連携を取り、LEEDユーザーの立場で活動する、日本で唯一の団体である。グリーンビルディングに関わる立場として、建設・製造・不動産・コンサルティング・建築設計・ビル経営・試験評価と、幅広い業種が参加している。
米国では、1980年ごろから、建物の省エネ性能を高める目的で、建物の断熱性・気密性を高め、換気量を絞るようになった。そのため室内の空気質が低下し、シックビル症候群が発生するようになった。
一方、米国発の建築物の環境性能第三者評価システムであるLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)は、1990年の終わりごろから開発が始まり、2000年に本格始動を始めた。このグリーンビルディング認証システムは開発当初から、地球環境への負荷低減が最大の関心事ではあるものの、上述の反省を踏まえ、室内環境の質の担保と両立できるよう、双方の基準を盛り込んだ評価の体系を構築している。
LEED認証システムは、定期的にバージョンアップを行いながら評価基準の引き上げを行っていることは本連載第1回「LEED認証の概要と、取り組む主体にとっての動機づけやメリットについて」に詳しい。LEEDにおける認証システムのうち、新築建物の設計施工を評価する、LEED NC(LEED New Construction)では、2000年の本格運用開始以来、v2.0、v2009、v4と3度の大規模なバージョンアップを経験している。
各国のグリーンビルを扱う団体を取りまとめるWGBC(World Green Building Council: 世界グリーンビルビルディング協会)は、2014年「オフィスにおける健康、快適性、生産性について―グリーンビルディングの次章(Health,Wellbeing & Productivity in Offices,The next chapter for green building)」と題する報告書を発表し、グリーンビルディングの次章はオフィスの健康、快適性、生産性だと述べた[1][2]。
この流れを表すように、2013年11月に発表されたLEEDの最新バージョンv4では、前のバージョンであるv2009に比べ、健康、快適性、生産性に関わる評価カテゴリーであるIndoor Environmental Quality (EQ)が扱う対象分野の評価方法が、他のカテゴリーに比べて、大幅に変更・拡大され、評価基準も厳格化されている。
今回はこの「室内環境」の評価カテゴリーを軸に、より詳しくLEED最新版v4のコンセプトや、最近普及が広がり始めたWELLの、LEEDとの関連について解説したいと思う。
[2]World Green Building Council
v4のBD+C(Building Design and Construction: 建物設計と建設)では、評価カテゴリーは全部で7つある。
そのうち配点が最も多いのは、図1に示すように、省エネ性能などに関わる評価項目を集めたEAカテゴリーであり、評価項目全体の配点の34%を占める。一方、室内環境に関わるEQカテゴリーの評価項目の配点は全体の16%で、旧バージョンのv2009から1%の増加にとどまっているが、評価対象がカバーする範囲が拡大された。つまり、v2009に比べ、v4では、広範囲に目配りされた多くの要件を満たさなければポイント取得につながらなくなった。
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