建築物の環境性能を評価する認証制度には、さまざまな種類がある。その1つであり、国際的な認証制度として普及が進んでいるのがLEED認証だ。本連載では一般社団法人グリーン ビルディング ジャパンのメンバーが、こうしたLEEDをはじめとする「グリーンビルディング認証」の概要や、取得のための仕組みを解説する。第2回では人に配慮をした建築空間を評価する「WELL認証」について解説する。
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一般社団法人グリーン ビルディング ジャパン(GBJ)注1のメンバーが「グリーンビルディング認証」について解説する本連載。第2回では、人に配慮をした建築空間を評価する「WELL認証」について解説する。
・第1回「LEED認証とは何か、取得のメリットと概要を知る」
(注1)GBJ:一般社団法人グリーン ビルディング ジャパン。LEEDの主体団体であるU.S.グリーンビルディング協会(USGBC)と連携を取り、LEEDユーザーの立場で活動する、日本で唯一の団体である。グリーンビルディングに関わる立場として、建設・製造・不動産・コンサルティング・建築設計・ビル経営・試験評価と、幅広い業種が参加している。
時代の大きな流れとして、近代社会では省エネ、環境共生などに向けた取り組みが世界的に進められてきた。しかし、その間に“我慢を強いる省エネ”やシックビル症候群などの課題が発生し、総合的な環境配慮の重要性が認識されるようになった。このようなことを背景にLEEDをはじめとするBREEAM、CASBEEといった建築物の総合環境評価が広く使われるようになった。
また、同時にオフィスなどでは健康・快適・生産性が問われ始めた。2014年9月にはWGBC(World Green Building Council)によって、それまで世界各地で行われた研究を踏まえた上で、報告書「Health, Wellbeing and Productivity in Office(オフィスの健康、ウェルネス、生産性)」が発表された。その中では、「価値を生み出す源泉は人であり、人の健康、快適性、生産性に関する配慮が今後ますます求められる。近い将来には企業のCEO、COOに並ぶ役割としてCWO(Chief Wellbeing Officer)が必要になる可能性がある」とまで言及している。
一方日本では、急速な高齢社会の到来と総医療費の増加が目の前に迫っていることに加え、メンタルヘルス対策の充実強化が求められている。また、国を挙げて働き方改革の推進が進められている。企業活動や投資の面では環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)のESGに配慮することの重要性が認識され始めており、建物の価値評価に価格だけでない側面が配慮され始めている。
このような、世の中の「人間フォーカス」の動きを背景にWELL認証は生まれた。既に認証を受けた案件は世界にまだ19件と少ないが、認証に向け登録を行っている案件数は既に332件(2017年3月8日現在)と、近年急速に関心が高まっている。日本では2015年に初めて紹介され、登録案件はまだ1件に留まっているが、経営的な観点から見た場合、LEEDに比べてWELLの方がインパクトは大きいという見方もあり、急速にその数を伸ばすのではないかと考えられている。
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