搬送土量を非接触で計測、ベルトコンベアの利用を効率化情報化施工

大成建設はシールドトンネルや山岳トンネル工事で使用する連続ベルトコンベアの搬送土量やベルト傷を、「光切断法」を用いて非接触・高精度に計測・管理できるシステムを開発した。掘削土砂を搬送する際のベルトコンベア作業を効率的に管理できるという。

» 2017年03月21日 06時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 大成建設は、工事現場向けシステム開発の演算工房(京都市)および建設関連機器開発のタグチ工業(岡山市)と共同で、シールドトンネルや山岳トンネル工事で使用する連続ベルトコンベアの搬送土量やベルト傷を、光切断法(ラインレーザー光とデジタルカメラを使用した断面形状測定技術)を用いて非接触・高精度に計測・管理できるシステム「ベルコンスキャナ」を開発した。

 近年のトンネル工事長距離化に伴い、掘削土砂の搬送に連続ベルトコンベアを利用する場合、工事を効率的に実施するためには、精度の高い搬送土量の管理や搬送ベルトの劣化状況把握、補修などへの迅速な対応が重要となっている。現在、土量管理は搬出されるトラック台数で行っているが、掘進に合わせたリアルタイムおよび正確な管理が困難で、ベルトスケールを用いた重量管理でも計測精度に課題があった。また、搬送ベルトに生じる傷や劣化状況を確認する保守・点検作業は、監視員により搬送ベルト稼働中に目視観察により行われている。そのため、ベルト傷などを正確に検知することができず、ベルト破断や交換作業、搬送途中の土砂処理などで、工事を中断しなければならない事例がみられる。

 これらの課題をクリアするため3社は、光切断法を用いて、搬送ベルト上の土量を計測・管理し、併せて搬送ベルトの劣化状況を常時点検する同システムを開発した。このシステムを適用することにより、トンネル工事で使用する連続ベルトコンベアの施工管理の効率化と保守・点検作業の省力化が可能となる。

 ベルコンスキャナは土量計測システムと搬送ベルト傷検知システムで構成されている。このシステムでは、一定区間のベルト形状と土の表面形状を読み取り、囲まれた区間の断面積に区間長を乗じてベルトに積載された土量を算出する。計測モニタに掘削に応じた土量収支バランス(計画量に対する搬送土量の過不足)を表示し、収支バランスの異常を警報により伝達するため、掘削の継続・中断を迅速に判断することもできる。また、従来の2次元スキャナによる計測誤差10%程度に対し、同システムを適用した場合の計測誤差は2%以内で、高い精度で搬送土量を計測・管理することが可能だ。

土量計測システム(クリックで拡大) 出典:大成建設

 さらに、光切断法を用いて、搬送ベルトの傷情報(傷の位置、大きさ、深さ)を常に把握することができ、ベルト劣化状況をリアルタイムに管理することで、従来に比べ点検の手間が減少する。加えて、ベルト破断や大きな損傷の発生前に、トンネル掘削工程に合わせて、保守・点検・ベルト交換時期などを自由に設定することができる。

 この技術は2013年から開発を進め、実証試験によりその有効性を確認しており、既に渡島トンネル木古内工区工事(北海道木古内町)羽沢トンネル工事(横浜市)の2件のトンネル工事で適用している。今後、3社は同システムを2017年度以降に6件のトンネル工事に導入する予定で、これらの適用実績を基に、さらに普及、展開する方針だ。

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