大成建設は豪雨や洪水などによる建物内部の浸水リスクを可視化できる評価・診断システムを開発した。BIM(Building Information Modeling)データを活用することで、従来より大幅に解析時間を短縮できるようになったのが特徴だ。
大成建設は、豪雨、洪水、津波などによる建物内部の浸水リスクを短時間で可視化できる評価・診断システム「T-Flood Analyzer」を開発したと発表した。同システムの適用により、建物内部への浸水状況を迅速に解析し、BIM(Building Information Modeling)データと連携させることで、さまざまな施設の浸水対策を策定することが可能となる。
近年、温暖化による異常気象がもたらす集中豪雨や洪水、巨大地震による津波災害などにより、建物の浸水被害が発生していることから、浸水リスク対策の重要性が増してきた。そのため事業継続計画の策定で、浸水リスク対策の検討が必要な場合、建物への水の流入経路や建物諸室などへの浸水状況を正確に把握することが求められている。
これまでの浸水リスクの評価・診断では、浸水解析前に必要な水の流入経路や建物内各室の開口部位置などを算出する作業に時間がかかっていた。また、解析結果は各部屋の水深変化を時系列で表示したグラフでしか表示できず、隣接する部屋の水深変化を容易に把握できないなどの課題があった。
大成建設ではそこでCADおよびBIMデータを活用して解析の迅速化を図り、解析結果を2次元または3次元化して表示できるT-Flood Analyzerを開発した。同システムではCADデータを用いて浸水解析時に必要な建物諸室の入力データ(水の流入経路、各室の開口部位置など)の整理を一部自動で実施できるため、解析時間を大幅に短縮できる。例えば地上1階地下2階の建物(約740平方メートル/階、地上部および地下1階は約15部屋)を事例とした場合、従来の方法に比べて3分の1以下の解析時間で結果の表示が可能だとしている(図1)。
また、建物内の各室への浸水経路、浸水量、浸水時間などの算出結果は簡単な図で可視化される。そのため、建物諸室全体への流入水の侵入経路や浸水深さを一目で把握できる。浸水対策に用いる防水扉や排水ポンプの配置や数量などは容易に変更でき、また、計算負荷が小さいため、複数の対策案を短時間で比較・評価でき、最適な対策案が立てやすくなる。
さらに、BIMデータを入手できる場合、より迅速に浸水解析を行うことができる。また、解析結果も3次元化し、任意の視点で表示が可能なため、関係者間で浸水状況や浸水リスク情報の共有を行えるなど、合意形成ツールとして有効だ。
今後、大成建設では水理実験による解析パラメータの更なる検証を重ねて、同システムの解析精度の更なる向上を図るとともに、浸水リスクの評価、浸水対策の検討をはじめ、施設におけるリスクマネジメントに積極的に展開、活用する予定だ。
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