篠崎氏は具体的な都市設計におけるCFD活用の事例として、東京・新宿エリアの例を紹介した。メインのツールとして使用しているのは、オートデスクの「Autodesuk InfraWorks 360」(以下、InfraWorks)と「Autodesk CFD」である。
まず、InfraWorksで都市の3Dモデルのベースを作成し、Autodesk CFD内の「SimStudio」で地面や緑化エリアなどの条件付けを行う。次にAutodesk CFDで材料条件や境界条件を設定し、解析を行う。新宿エリアの例では、まず気温、風力、熱射を解析し、これらの個別の解析結果を、WBGT(暑さ指数)として総合的評価できるようにした。
篠崎氏がこの事例の特徴として挙げたのが、Autodesk CFDをで得られた解析データを、再びInfraWorksに戻すという点だ(図2)。「解析結果をInfraWorksに戻すことで、都市の環境データをより分かりやすく、捉えやすいものにしようという狙いがある。サーモグラフィ画面では分からなかったこと気がつく場合もあるし、都市の環境や仕組み、そしてその価値をもっと分かりやすく伝えられるようにしたいという考えだ」(篠崎氏)
都市の広範な解析となると、かかる時間も膨大になるのではないかという懸念がある。しかし、この新宿エリアの解析の事例では、5メートル格子で合計692万メッシュを解析しているが、合計12.5時間で全ての解析・評価を終えられたという(図3・4)。
篠崎氏は「この解析に1週間以上かかってしまっては、設計者としては使えない。しかし最近ではこうして十分使えるレベルになってきている。また今後、解析能力をクラウド側が担っていくことで、より素早い解析が行えるようになると考えている。そうなれば設計業務の中でより効果的かつ直感的に活用できるようになるのではないか」と期待を語った。
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