NEDOプロジェクトで橋梁点検ロボットの開発を進めているイクシスリサーチは、神奈川県川崎市内にある道路橋で、実証試験の様子を公開した。主桁下フランジにつり下げるロボットで、ステレオカメラを使ってクラックや鋼材の腐食などを高精度に確認できる。目視で行われている橋梁点検作業の効率化に貢献するロボットとして早期の実用化を目指す方針だ。
橋梁やトンネルなどの社会インフラの老朽化が進む中で、維持管理コストの増大や点検作業などの専門知識やノウハウを持つ人材の減少が大きな課題となっている。そこで活躍が期待されているのがロボットだ。点検作業の効率化や省人化などに貢献する技術として、注目が集まっている。
こうした背景から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2014年度から「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」を立ち上げ、さまざまなインフラの維持管理作業に貢献するロボット開発の促進を図っている。同プロジェクトのもとで橋梁点検ロボットの開発を進めている1社がイクシスリサーチ(横浜市)だ。同社は2016年7月26日に神奈川県川崎市内にある道路橋で、開発中のロボットを使った実証試験の様子を公開した。
イクシスリサーチが開発を進めているのは「主桁吊り下げ型ロボット」だ。鋼板をI形断面に組み立てて桁にする鈑桁橋を対象とするロボットで、富士フイルム、首都高速道路技術センターと共同開発している。並行する2つの主桁下フランジにタイヤを引っ掛けてつり下がるように設置するのが特徴的だ(図1)。
このロボットの開発目的は、人が近接目視で行っている橋梁の床版に生じるクラック(ひび割れ)や鋼材の劣化状況などの点検作業を、より効率的化することにある。「人の目」の代わりとなるのは、富士フイルムが特別に開発したステレオカメラだ。ライトとフラッシュを備えており、遠隔操作で橋軸方向に移動しながら床版や鋼材の様子を撮影できる。ステレオカメラは左右と垂直方向に動き、視点も柔軟に変えられる。点検したい部分に近づいて撮影可能だ(図2)。撮影した映像は地上のモニターを通して確認できる。
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