総合設備工事のダイダンは、オフィスに必要な照明・空調・防災などの設備機能を集約した一体型のユニット「CEILING FREE(シーリングフリー)」を開発した。これまで個別に設置していた機器を一体化することで施工工期の短縮に貢献する他、ビルのZEB化のポイントとなる照明・空調エネルギーの削減につながる技術を採用している。
ダイダンが開発した「シーリングフリー」は、これまでオフィスの天井面に別々に設置していた設備機能を1つに集約しているのが特徴だ(図1)。天井ボードを張らずに、建物躯体から直接ユニットを吊り下げるだけで、照明・空調・防災設備などの機能を配置することが可能となり、工期の短縮と作業効率の向上に貢献する。さらにオフィスビルのZEB化に向けたニーズに対応するため、エネルギー消費量が大きい照明と空調の省エネ化を図る技術を導入した。
照明器具と空調機器が一体となったユニット照明器具と設備プレートを一体化したユニットがあり、設備プレートには火災感知器(煙・熱)、非常照明(誘導灯)、館内放送用スピーカー、制御用センサーなどを1ユニットに最大3つまで設置可能だ。1ユニットのサイズは長さ131×幅78×高さ20センチメートル。
シーリングフリーの照明は、放射状に光を放ち壁や梁まで明るさが届くように、発光面を4分の1円状に湾曲させている。このため、少ない照明の出力でもオフィス全体を柔らかい光で包み込む。机上面の明るさ(照度)を確保する従来の照明では、出力を落とすと机上面は明るくても壁や天井面に光が届かないでの、全体としては薄暗くなっていた。これを「明るさ感」という新しい照明設計方法に基づき、従来のオフィス照明より少ない消費エネルギーで「快適」な照明環境を実現する。さらに明るさセンサーを導入することで、自然光の利用などによる照明エネルギーの削減にもつながる(図2)。
空調方式は、室内に吹き出される外気に誘引される室内空気を、冷温水コイルで熱交換し、外気と混合してから吹き出すアクティブチルドビームという方式を採用している。このため、空調機器から吹き出される空気は部屋の温度に近く、室内の温度ムラが生じにくい。
さらにコアンダ効果(流れの中に物体を置いたときに、その物体に沿って流れの向きが変わる流体の性質)を活用することで、照明器具の湾曲面に沿った気流が形成されるため空調機器から吹き出される空気が身体に直接当たらず、不快感が少ない快適な環境が構築できる。この他に地中熱や太陽熱などの自然エネルギーを使用すれば、化石燃料に由来するエネルギーの消費を10〜20%程度削減できるという。
照明・空調・防災設備を集約した一体型のユニットになっているため、施工の作業量が低減し、工期を短縮することができる。施工コストは条件によって変わるが、一般的なオフィスビルの場合で1平方メートル当たり10〜15万円としている。
年間のオフィスビルの消費エネルギーの約20%が照明器具、40%が空調設備で使用されている(省エネルギーセンター「オフィスビル のエネルギー消費の特徴」)ため、照明と空調の消費エネルギーを削減することは、ZEBを実現するための重要なポイントになる。また、ZEBはエネルギー消費を抑えるだけでなく、建物の利用者の快適性も確保することが必要だ。
ダイダンではシーリングフリーをZEBを目指すオフィスビルを中心に、2020年までをめどに5施設に導入したい考えだ。今後はオフィスビル以外の施設にも適用できる新製品を開発するなど、ラインアップの拡充にも取り組むとしている。
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