電気やガスの使用量を最適化するエネルギー管理システムの利用範囲が広がってきた。オフィスビルや工場の導入例が増えてきたことを受けて、日立製作所は最大3万拠点まで管理できる新しいサービスを10月から開始する。エレベータや発電機から生産ラインまでを1つのシステムで対応できる。
従来のエネルギー管理システム(EMS)では導入場所に合わせて、ビル用のBEMSや工場用のFEMSなどを適用してきた。管理対象の機器やエネルギーの種類に違いがあるほか、管理項目も分かれるためである。同じ会社でもオフィスと工場のエネルギーをまとめて管理することは難しかった。
日立製作所は導入場所や管理対象に関係なくエネルギーの使用状況を集中管理できるサービス「EMilia(エミリア)」を2014年10月から開始する(図1)。2015年4月には東南アジアにも展開して、国内外で一気にエネルギー管理システムの事業を拡大する計画だ。
EMiliaの管理対象はビル・工場・店舗など施設のタイプを問わない。エネルギーの生産と消費に関係する発電・蓄電機器、空調・照明設備、エレベータや生産ラインなども管理できる(図2)。計量メーターは電気だけではなくてガスと水道にも対応する。さらにカードリーダーや監視カメラなどのセキュリティ設備を加えることも可能になる。
1カ所の拠点あたり最大5万点までを管理対象に含めることができる。しかも1つのシステムで管理できる拠点の数は3万まで増やせるため、国内の企業であれば管理する範囲を超えてしまうことはなさそうだ。システムの規模によって、ネットワーク経由でクラウド型のサービスを利用する方法や、企業内にサーバーを設置して独立したシステムとして運用することもできる(図3)
エネルギー管理の機能は「監視」「分析」「制御」「報告」の4分野をカバーする。監視は電力の使用量をもとに需要予測や機器の故障検知などが可能だ。分析は機器別の実績値をグラフなどで管理画面に表示する(図4)。制御の機能は機器の電源オン/オフのほかに、工場の生産計画と連動した自動運転を実行できる。報告の中には官公庁の指定に合わせて報告書を作成する機能もある。
これまでに日立製作所は地域レベルの大規模なEMSから中小ビルのEMSまで数多くの導入実績を上げてきた。最近では千葉県の「柏の葉スマートシティ」でEMSの開発を担当して、地域内の複数のビルで電力を融通できる先進的な仕組みを構築している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.