電気料金が値上がりして、節電は企業や商店にとって大きな課題になっている。ビル単位で消費エネルギー量を制御して節電を実現するのが「BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)」だ。
自宅でエアコンと電子レンジを使っているときに、ドライヤーの電源を入れたら突然真っ暗になった。こんな経験をしたことがある人は少なくないだろう。大量の電力を同時に使おうとして、ブレーカーが落ちたのだ。ブレーカーを上げればすぐに電力を使えるようになるが、同時に多くの電気製品を使わないように気を付けながら電気を使わなければならない。
住宅の場合は契約アンペアを決め、それに応じたブレーカーを電力会社が取り付ける。契約アンペアが示す値を超える量の電力を使おうとするとブレーカーが落ちるようになっている。契約アンペアを大きくすれば、多量の電力を同時に使えるようになるが、電気料金の中の「基本料金」が高くなる。
このように、住宅では同時に使える電力の上限は契約によって決まっており、上限を超える電力を使おうとすると電力供給が止まるようになっている。一方ビルなどの場合は、このような制限はなく好きなように電力を使える。しかし、制限なく好きなように電力を使っていれば当然電気代は上がる。電力使用量が上がっていけば基本料金も自動的に上がっていく。基本料金が上がってしまうと、その後1年間下がらない。無駄遣いのツケを1年間払い続けることになるわけだ(図1)。このように、ビルにおいては放置していれば電力コストはかさむ一方だ。
家庭におけるブレーカーのように、ビルにおけるエネルギー使用量の上限を設定し、それ以上消費させないようにするシステムがBEMSだ。BEMSを使うときは、ユーザーは上限とする電力消費量の値をBEMSに設定する。電力消費量が設定値に近づくと、BEMSはビル内の空調や照明などの機器を強制的に停止させるなどの方法で、設定値を上回らないように制御する。
BEMSを利用すると、設定した値以上の電力を使えなくなるので、基本料金の上昇を抑えられる。無駄遣いのツケを払い続ける必要がなくなるのだ。これがBEMSがもたらす最大の効果と言える。結果として使用する電力量も減るので、従量課金の電気料金も下がる。
製品によっては上限値を時間帯に応じて細かく変化させることができる。このような製品を利用すると、あまり電力を必要としない朝や夜の設定値をより低くして、消費電力量をさらに下げることができる(図2)。
最近のBEMSは電気機器をいきなり停止させるだけでなく、空調の設定温度を調節したり、照明を暗くしたり、サーバーの処理能力に制限をかけるなど、さまざまな方法で消費電力量を下げるようになっている。
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