BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の導入事例を紹介する連載の第1回目は、JR東日本グループが運営する東北3県の主要な駅ビル4か所に導入したケースを取り上げる。BEMSを中心とした節電対策により、2011年度の電力使用量を18%削減した。
JR東日本グループの仙台ターミナルビルが運営している大型の駅ビル「エスパル」は3つの県にまたがって4か所に分散している。仙台駅(図1)のほか、山形駅、福島駅、郡山駅にある。このうち3つの駅ビルにはホテルもあって、空調を中心にエネルギーの使用量は非常に多い。
4か所を合わせた年間のエネルギー使用量は約60万GJ(ギガジュール)にのぼり、電力に換算して1.7億kWhに相当する膨大な量になる(電力以外のエネルギーも含む)。しかも4つの駅ビルは一番新しい山形駅でも建設から20年近く経過しており、省エネ対策を実施するためにも設備の改修を迫られたことから、合わせてBEMSの導入に踏み切った。
採用したBEMSはビル管理システムで実績のあるジョンソンコントロールズ社の「METASYS」である。さらに「EneWorks」というエネルギー解析ツールを組み合わせて使っている。このBEMSで収集した4つの駅ビルのエネルギー使用量を、仙台のオフィスにあるパソコンで一元的に管理できるようになった(図2)。
BEMSを活用した節電対策のほかに、一部の設備にLED照明を導入するなどした結果、2011年度には年間の電力使用量を837万kWhも削減できた。前年度からの削減率は18%になったが、東日本大震災の影響で駅ビルやホテルが休業していた期間があり、その点を考慮すると削減率は5%程度になるという。それでも200万kWh以上の削減効果がある。
BEMSの導入コストは工事費を含めて約2億円かかっている。ちょうどNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施していた「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(BEMS導入支援事業)」の補助金を受けることができ、導入コストの約3分の1をカバーできた。電気料金の低減などにより6年半程度で回収できる見込みである(図3)。
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