会場でのインタビューで、多田氏、遠藤氏、冨永氏は、ユーザー会に懸ける思いと存在意義を熱く語った。
多田氏はUSERFESTの本質を「会社は違えど、ベテランも初心者も、興味はあるけれど手が出せなかったことを教え合い、トークし合いながら互いのスキルアップを目指す仲間を作る場」と表現した。
初めて実行委員を務めた冨永氏は、自身の体験を振り返り、「会社でArchicadを始めた時、社内で本当に1人という立場で、教わる人もおらず苦労した。そんな中、ユーザー会のつながりに本当に救われた。技術だけでなく、コミュニケーションや人としての姿勢を学び、自己成長できた」と語り、アットホームで温かいコミュニティーの輪を強調した。
遠藤氏も同意を示し、「実行委員は何度もやっているが、来場者に技術的な知識の習得はもちろん、Archicadを使ってて良かったとか、仲間がいていいなみたいに思ってもらえるイベントとなればとの思いで毎回企画している」とコメントした。
その言葉を裏付ける催しが、リアルでは初となる「モデリングチャレンジ」。四国や千葉、沖縄などの地域ごとに、会社の枠を超えたチームを結成し、お題に沿ってBIMモデリングの腕を競った。
また、これまでのユーザー会は、建築設計事務所のユーザーが主体となることが多かったそうだが、2026年の実行委員は施工の人間が初めて委員長を務め、ゼネコンなどの施工色が強くなった。多田氏は、「普段の業務では設計事務所と施工側で対立することもあるが、USERFESTの場では常に仲良く、互いに教え教えられる関係にある」と、職種や職位の壁を越えた連携の強さをアピールした。
施工BIMの目玉となったのが「施工ライブモデリング」で、 設計モデルから施工ステップ(1階から3階までの躯体作図など)のBIMモデル化をライブで披露した。多田氏は「施工ステップはゼネコンの施工BIMで、一番ウエートが高い。現場所長の頭の中にあるイメージを形にし、職人や設計事務所、近隣住民など全ての人と意思統一できるのが施工BIMとなる」と、その重要性を説明した。今回は選抜された4人がそれぞれのやり方でライブモデリングを披露し、多様なアプローチを参加者と共有した。
また、前回に引き続き「AI」コーナーも人気を集めた。初級、中級、上級と分け、AIを活用したレンダリング手法をはじめ、BIMとAIを連携させた自動化のアプローチ、さらにはArchicadアドオンやアプリの開発手法までを網羅した。
ユーザーの中には、AIを活用してArchicad内で動く独自のアドオン(機能拡張)プログラムを開発している人もいる。Graphisoftが開発したパラメーター制御用のプログラミング言語「GDL」を苦手とするユーザーでも、生成AIを活用することで、開発のハードルが下がりつつある。こうした先進的な取り組みや開発したプログラムを共有し合う場として、グラフィソフトのコミュニティー内にAIフォーラムを立ち上げる構想もあるという。サイバーセキュリティなどの課題をクリアにしつつ、ユーザー同士がさらに協力し合えるプラットフォームの構築を目指している。
他にも、BIMとAIを語り尽くす多種多様なセッションは、初心者向けからマニアックな話題までの幅広いテーマで展開した。
初心者向けトークテーブルでは、便利なArchicadツールの使い方や設定について気軽に相談できる場を提供。「マニアックな使い方」をテーマにしたセッションでは、Archicadと無料のMEPツールを使ったデジタルツインなど、常識に囚われない自由なツールの活用法を提示した。
点群データの活用とVR体験をテーマにしたセッションでは、リフォームなどの実事例を交えながら、点群データからBIMモデルをどのように作成して利活用していくかを解説。2026年4月から始まったBIM確認申請に関するブースでは、設計実務に直結する知見を共有した。
さらに、BIMの「しくじり先生」と題したトークセッションでは、参加者が自身の失敗談や「やらかしデータ」を赤裸々に公開。スマートフォンを使ったリアルタイム投票を取り入れ、参加者が共感しながら改善策について意見を交わす実践的な場となった。
交流のハブとなる「サロン」とウィッシュボード会場の中央には、「サロン・ド・ノワール」と名付けられた休憩と交流のためのスペースを設営。「サロンマスター」を名乗る実行委員が常駐し、セッション間の頭のリフレッシュや参加者同士の雑談の場として機能した。「初心者セッションに参加したけれど次は何を聞けばいいか分からない」といった参加者への案内、Graphisoftのノベルティーが当たるクイズ企画なども開催し、イベントの潤滑油となった。
会場の後方には「ウィッシュボード(ウィッシュリスト)」を設置。Archicadへの要望やアイデアを付箋に書いて貼り出し、他の参加者が共感したアイデアにシールを貼るという仕組み。実行委員長の多田氏は「シールの数が多く集まれば、グラフィソフトの開発につながるかもしれない」と積極的な書き込みを奨励した。
「仲間を作ろう」という目的のもと、300人以上のユーザーがBIMの知識と経験を共有し合ったUSERFEST2026――。単なるBIMソフトウェアの輪を超え、AI時代の建設業界をともに開拓するコミュニティーの熱気が会場全体を包み込んでいた。
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