奄美大島に高床4mの環境共生建築、SANU × SUEP.が「高倉」と環境シミュレーションで創出プロジェクト

SANUは、鹿児島県奄美大島のシェア別荘「SANU 2nd Home 奄美大島1st」の開業に合わせ、建築ユニットSUEP.と新しい建築モデル「ARC」を共同開発した。ARCは、奄美大島の伝統的な「高倉」の知恵と、環境シミュレーションが交差する場所から生まれたSANUの新たな環境共生建築の試みで、床高4メートル、流線型の屋根の建築物となる。

» 2026年05月11日 09時00分 公開
[BUILT]

 SANUは2026年5月1日、鹿児島県奄美大島の「SANU 2nd Home 奄美大島1st」開業に合わせ、建築ユニット「SUEP.(スープ)」と共同開発した建築モデル「ARC(アーク)」を公開した。

伝統の「高倉」と環境シミュレーションで、風土に応答する建築を創出

建築モデル「ARC」 建築モデル「ARC」 出典:SANUプレスリリース
江戸東京たてもの園にある「奄美の高倉」 江戸東京たてもの園にある「奄美の高倉」 出典:Tokyo Museum Collection

 ARCは、奄美大島の亜熱帯海洋性気候と生態系を前提に設計した世界自然遺産地域で初の自社建築となるという。

 設計では、奄美大島の伝統的な高床倉庫「高倉」と環境シミュレーションを組み合わせ、自然環境への影響を抑えつつ滞在や移動、エネルギーを一体で設計した。施設は、Small(2人)、Medium(5人)、Large(6人)の全9棟で構成する。

 高倉は、湿気、ハブ、そして激しい風に対し、数百年にわたり積み上げられた「床を持ち上げ、風を通す」という構造知を現代建築で再解釈した。地面をコンクリートで塞がず床高は地上4メートルに設定し、建物を浮かせることで湿気やハブの侵入を避けるとともに、地表の空気や水の流れを遮らない構造としている。建物下部のピロティは海風が通り抜けるアウトドアリビングとして機能し、エアコンに頼り切るのではなく、自然の気流を生かし、空調依存を抑えた。

 屋根は、SUEP.による60ケースの環境シミュレーションを基に導いた流線型とした。風圧を逃がしながら室内のエネルギー効率向上に寄与する形状で、流線型の曲面屋根を持つ建築を「ARC(弧)」と名付けた。海に向かって緩やかな弧を描くそのフォルムは、島に馴染(なじ)む船やサーフボードの曲線とも共鳴し、風景の中に穏やかに佇む。室内空間は、座卓を中心としたローワーリビング(座卓)を配置し、床に座って大きなテーブルを囲む奄美大島らしい食卓の文化を翻訳した。

ローワーリビング(座卓) ローワーリビング(座卓) 出典:SANUプレスリリース

 建物のしつらえには地域素材や文化要素を取り込んだ。床には南洋材の硬質フローリング、壁には漆喰、外装には宮崎県産杉材を使用。照明には鹿児島の蒲生和紙を採用し、クッションカバーには大島紬のアップサイクル素材を用いた。植栽は在来植物を中心とし、一部に可食植物も取り入れている。

一部、可食性植物(エディブルガーデン)を取り入れたランドスケープ 一部、可食性植物(エディブルガーデン)を取り入れたランドスケープ 出典:SANUプレスリリース

 エネルギー面では、屋根一体型の薄型太陽光パネルと蓄電池を搭載し、拠点内で電力を賄(まかな)い、ZEB認証の取得を予定している。EV(電気自動車)充電設備も備え、LEXUSの電気自動車レンタカーと連携し、滞在から移動までの脱炭素化を図る。また、九州大学との連携で、建設時の木材端材を再利用した屋外シャワーブースも設け、資源循環の仕組みも組み込んだ。

屋根一体型の薄型太陽光パネル 屋根一体型の薄型太陽光パネル 出典:SANUプレスリリース

 奄美大島は2021年に世界自然遺産に登録されて以降、観光開発が進む。一方で、日本の生物種の約13%が生息するとされる。SANUはこの場所で、「どう建てるか」は「自然とどう関わるか」と捉え、自然環境への影響を最小限に抑えながら、人が滞在する新しい在り方を模索した結果、ARCを建築するに至ったという。

建築概要

建築名称:ARC(アーク)

拠点:SANU 2nd Home 奄美大島1st

住所:鹿児島県大島郡龍郷町赤尾木松崎620番1

設計:SUEP.(末光弘和+末光陽子)

棟数:9棟

エネルギー:太陽光発電+蓄電池(ZEB認証取得予定)

構造:高床式鉄骨+木造建築(鋼管杭基礎)

施工:中村建設・浜島産業特定建設工事共同企業体

FFE・OSE選定:SANU Architect + Misa Goto

制作照明・家具:BEARER(デザイン)、yuge(制作)

大島紬アップサイクルデザイン:Public Crafts(企画・制作)、Studio Waraya(大島紬提供)、就労継続支援B型事業所さっこら(裂織)

ランドスケープ:HADANA 担当 / 葉棚達也

太陽光パネル:Monochrome

開業日:2026年5月1日

「ARC」 「ARC」 出典:SANUプレスリリース

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