高品質な3D空間内では、イマーシブ(没入感)な体験を通して、誰にでも分かる形で協議を進められる。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とWebブラウザから、多様なステークホルダーが最大50人まで同時参加できる。設計案が施工時まで分からないブラックボックス化を防ぎ、早い段階で認識の齟齬も減らし、関係者全員が納得感ある意思決定を下せる。3Dデータは実物スケールの表示のため、図面が読めない施主でも使い勝手や動線をイメージしやすい。
VR空間には、点群ベースの上にBIMモデルを配置したり、図面や資料、RICOH THETA(シータ)で撮影した360度画像や動画を重ねて表示したりと、各種データを統合できる。インタフェースにもこだわり、リコーで10年以上のVR開発実績を有するチームが手掛け、手を伸ばすだけで使えるレーザーポインターなど、直感的に使える特許取得済みのUI/UXを実装している。
リコージャパン フィールドソリューション企画室の前鼻毅氏は、「ワンアクションでBIMへの表示切り替え、仮想のメモを近づけて話すだけの音声入力など、豊富なコミュニケーション機能が他の建設用VRサービスにない強み。その点がゼネコンの設計部門にも評価されている」と強調。
他の機能については、「大画面投影時には視点がブレる一人称ではなく三人称視点へ自動で切り替える以外に、パフォーマンスが落ちても描画がカクカクしない調整、身体とのズレを感じないように移動時にあえて1回暗くするといった“VR酔い対策”も備える。操作が不慣れな方には、参加者全員が一緒に移動するツアー機能を用意した。確認したいポイントはVR空間上で丸ごと保存して後で復元できるため、見返せして確認するのに役立つ」と説明した。
直近では、石神井川護岸整備事業に伴う河川管理用道路の設計業務に活用された。整備事業は洪水被害の防止や軽減に加え、住宅に隣接するために地域住民の日常生活を考慮した河川環境の整備と保全が目的となっている。そのため、周辺への影響を事前に共有する必要があり、受託者のドーコンは岩崎の仲介を受けRICOH Virtual Workplaceを導入した。3D点群データをベースに生成したVR空間で、護岸と橋の接続部や沿道と住居入口との高低差、沿道の勾配などを確認。また、平時だけでなく、豪雨時の河川水位が上がった状態も3Dモデルで再現し、円滑な合意形成が実現した。
ドーコン 東京支店 事業部 主任技師 松田達生氏は、採用の決め手について、「以前、別のVRシステムを使った際は、データ変換に手間とコストが掛かってしまった。現在は国土交通省のBIM/CIM原則適用に伴い、(公共工事では)CIMデータを作らなければならず、必然的に3Dデータが手元にあるので、RICOH Virtual Workplaceであれば工数を掛けずに簡単にVRを使える環境を整う。今回の工事で体験した東京都 建設局の担当者からも、コミュニケーションツールとして好意的な反応があった」と振り返った。
ドーコンの次の展開では、3DGSデータを活用し、より伝わる設計検討の高度化を構想する。3DGSは2023年に登場したリアルタイム3D描画技術で、現実世界のシーンを多数の半透明な楕円体(ガウシアン)の集合体として表現し、点群よりも細かい質感や光の反射をフォトリアルに表現できる利点がある。
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