AIが“快/不快”の感情で景観を評価 インフラ整備前の社会調査にAIを活用【土木×AI第33回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(33)(2/3 ページ)

» 2025年06月18日 10時00分 公開

効率的な調査を可能にするLLM

 LLMは、文章の要約やテキストデータの変換に適しています。そのため、各種データを保管/管理する“データリポジトリ”への利活用も考えられています※3。下表でいうメタデータとは、データを説明するデータのことで、キーワードや特徴などをメタデータとしておくことで検索しやすくするためのものです。

 例えば図書館のデータベースで図書を探すときに使う、書名、著者名、出版年なども一種のメタデータです。メタデータがあることでデータが使いやすくなるのですが、データが大きくなるとメタデータの作成の負担が増えてしまいます。そこをLLMで効率化できるわけです。

データリポジトリにおけるLLMの利活用とユースケース データリポジトリにおけるLLMの利活用とユースケース 出典:※3

※3 地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業(DIAS) 国立情報学研究所(NII)チーム「データリポジトリとLLM勉強会」

 収集した調査票などの分析にもAIが利用されています。文献4では、豪雨災害時における住民避難行動のアンケート調査データを画像データへ変換し、AIを用いて分析しています。また、文献5では、誤入力などの検出へのLLMの適用性が検討されています。

※4 「アンケート調査データへ画像認識技術を適用した豪雨災害時の住民避難行動分析」高田歩武,伊藤可依都,高木朗義/AI・データサイエンス論文集5巻3号p549-556/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年

※5 「ChatGPTを用いたxROADデータにおける不一致検知能の可用性評価」高橋悠太/AI・データサイエンス論文集5巻3号p495-501/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年

 文字や文書などの読み取りには、「OCR(光学文字認識:Optical character recognition)」技術を用いることもできます。アンケート以外にも、ナンバープレート※6や点検調書※7の読み取りにも使われています。下図は、点検調書からのAIを用いたOCRによる文字の読み取り例です。

橋梁点検調書からの文字の読み取り例 橋梁点検調書からの文字の読み取り例 出典:※7

※6 「車両の形状とナンバープレートの分類番号の認識結果を用いた車種判定手法に関する研究」住吉諒,今井龍一,山本雄平,中原匡哉,神谷大介,姜文渊/AI・データサイエンス論文集5巻3号p418-426/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年

※7 「Deep Learningを用いた橋梁点検調書からの文字情報抽出」山根達郎,全邦釘,本田利器/AI・データサイエンス論文集1巻J1号p71-77/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2020年

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