政府が目標とする2050年までのCO2排出量ゼロ達成には、既存オフィスビルの省エネ化が欠かせない。だが、現状では事業収益化に結び付かず、市場は停滞している。こうした中、日建設計は日本政策投資銀行とDBJアセットマネジメントと手を組み、省エネ改修のメリットを施主や不動産デベロッパーにも“見える化”する「ゼノベ」プロジェクトを開始した。
政府は2050年までの温室効果ガスの排出量と、吸収量の均衡を目指す「ネットゼロ」を目標に掲げている。
さまざまな施策を進める中で、重要なポイントとなるのがオフィスビルの排出する温室効果ガスの削減だ。2022年度のCO2排出量のうち、業務部門は全体の17.3%を占め、その割合は無視できない。環境省が掲げる数値目標では2030年までに、2013年度比で51%の削減を求めている。
こうした情勢下で課題となっているのが、オフィスビルの環境性能向上だ。全国のオフィスビルの65%が築20年を経過し、温室効果ガスを減らす技術を反映するのは容易ではない。
また、建物の環境性能を向上させる改修工事(=環境改修)は、不動産価値を上げると見なされず、事業化の見通しも立ちづらくボトルネックとなっていた。
そこで日建設計は2022年から、日本政策投資銀行とDBJアセットマネジメントと協業し、既存建物の環境性能を向上させる新しい改修の在り方を「ゼロ エネルギー リノベーション(ゼノベ)」プロジェクトと名付け、新たな市場開拓に乗り出した。
ゼノベプロジェクトは、企業への実践事例の提供と合わせ、環境性能の効果を不動産価値に反映する。
近年、ESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治)やSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)への関心は、企業の間で高まっている。そうした需要を追い風に、環境改修の投資効果が分かるように可視化すべく、CO2削減量を定量評価するモデルを構築。炭素価格も組み合わせることで、経済的な評価ができる仕組みを整えた。
そのため、テナントは省エネルギー性能向上による光熱費の削減、ビルオーナーは賃料引き上げの理由付け、投資家はCO2排出量の削減による物件評価の上昇をメリットとして享受でき、環境改修の市場拡大につながる。
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