大成建設は、神奈川県横浜市戸塚区の技術センターで、国内最高レベルの性能を有する遠心力載荷実験装置の運用を開始した。水平方向だけでなく鉛直方向にも同時加振が可能で、高い構造の安全性が必要となる原子力施設の設計検証にも使える。
大成建設は、神奈川県横浜市戸塚区の技術センターにある「遠心力載荷実験装置」を国内最高レベルの性能を持つ装置に更新したと2025年4月に発表した。
新しい実験装置は、巨大地震や長周期地震が発生した際の地盤変形を模型実験で高精度に再現し、水平方向だけでなく鉛直方向にも同時に加振できるため、高い構造安全性が求められる原子力施設の設計法を検証するのに使える。
遠心力載荷実験装置は、振動台を備えたアームの高速回転で試験体となる模型に遠心力を作用させて、深い地中と同じような大きな圧力がかかった状態を作り出す。振動台を用いて模型を加振し、地震時の挙動を再現することで、地盤内の杭などの構造物基礎の支持力や軟弱地盤で液状化対策の効果を検証し、新技術の開発などを推進することが可能になる。
旧装置の振動台で再現できる地震動は、構造物の供用期間中に一度以上発生する確率が高い中地震動のレベル1相当となる「中地震(20G)」までだった。新装置では、水平/鉛直方向ともに、レベル2相当の地震動を超える最大加速度60Gまでの加振が可能になり、巨大地震発生時の地盤内の挙動を高精度に再現する。
南海トラフ巨大地震発生への懸念から、免震建物や超高層建物の構造設計で、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ「長周期地震動」の影響を検討することが義務化されている。新装置の振動台の最大振幅は20ミリで、長周期地震動に相当する変位量に対応し、長周期地震動による構造物への影響を事前検証できる。
旧装置で使用していた振動台は、水平方向の加振機能のみ。新装置は鉛直方向の加振機能も搭載し、水平/鉛直両方向で同時加振する。そのため、原子力施設などを対象とした、水平方向と鉛直方向の揺れが同時に作用した場合の挙動を考慮して設計法を検証できる。
実験模型などの試験体の搭載スペースは、旧装置の1(幅)×1(高さ)×1(奥行き)メートルから2(幅)×2(高さ)×2(奥行き)メートルへ拡大。杭などの構造物基礎や地盤改良体などの形状を細かく設定した実験、広い敷地に複数の構造物が隣接する複雑な状況を再現した実験にも対応する。
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