鹿島建設は、製造過程で排出されるCO2が実質ゼロ以下のカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」に、2種類のグレードを設定した。従来のカーボンネガティブ型に加えて、カーボン低減型を新たに設定し、大型のプレキャストコンクリート製品の製造に活用している。
鹿島建設は2024年5月9日、製造過程で排出されるCO2が実質ゼロ以下のカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」に、2つのグレードを設けると発表した。コンクリート1立法メートル当たりのCO2吸収/固定量が100キロ以上の従来のカーボンネガティブ型は「CO2-SUICOM(P)」、同100キロ未満のカーボン低減型は「CO2-SUICOM(E)」とする。なお、(P)はPREMIUM、(E)はECONOMYの略。
また、鹿島建設は今回、CO2-SUICOM(E)を使用した大型のPCa(プレキャスト)コンクリート製品「大型ブロック擁壁」を開発した。セメント材料の置換により製品1個当たりのCO2を約64キロ削減するとともに、断面の約40%が炭酸化したことでCO2吸収/固定量が約8キロとなり、現行の製品に比べて合計約72キロのCO2を削減した。試算によると、価格はCO2-SUICOM(P)よりも33%安くなる。
CO2-SUICOMは、コンクリート主原料のセメントの半分以上を特殊な混和材「γ-C2S(ガンマシーツーエス)」と産業副産物に置き換えることで、セメント製造時に排出されるCO2を削減する技術。コンクリートが固まる過程で、強制的にCO2を供給する「炭酸化養生」を行い、γ-C2Sが大量のCO2を吸収/固定する。
CO2-SUICOM(P)はこれまで、主に建築工事で舗装ブロックに利用されてきたが、現在は建築工事だけでなく、より多くのコンクリートや大型製品が必要な土木工事でも導入ニーズが高まっているという。しかし製品の大型化は、CO2の吸収/固定の対象範囲も広がることからコストの上昇が伴う。そこで、鹿島建設は、カーボンネガティブには至らないものの、CO2排出量を削減しながらコスト面も見合うバランスの取れた材料設計を採用したカーボン低減型としてCO2-SUICOM(E)を設定した。
コンクリートがCO2を吸収する範囲(炭酸化深さ)は、炭酸化養生の時間とともに大きくなるが、CO2を吸収する速度は初期が速く、その後は徐々に遅くなるという特性がある。CO2-SUICOM(E)は、この点を踏まえ、CO2吸収の最も効率の良い養生時間を算定している。
CO2-SUICOMはこれまで、炭酸化養生を行うことでコンクリートのpHが中性域になることから、鉄筋腐食のリスクを考慮して無筋ブロックとしてきた。今回の大型PCa製品の検討モデルでは、ひび割れや破損防止を目的に利用する鉄筋(用心鉄筋)を、有機系繊維の配合で代替した。さらに、有機系繊維の中でも、材質、繊維の径や長さ、コストなどを勘案し適切なものを選定し、配合する繊維の量も最適化している。
製品の品質については、PCa製品メーカーであるケイコンの大型ブロック擁壁にCO2-SUICOM(E)を利用した製造実験を実施。製造工程と完成品の品質を検証した結果、量産可能なことを確認した。
鹿島建設は今後、CO2-SUICOM(E)を使用した大型PCa製品を実際の工事に導入するとともに、複数のプレキャストコンクリート製品メーカーと連携し、新たな製品開発を進める。
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