PAS 2080は、ビル/施設の炭素排出ライフサイクルに焦点を当て、気候変動による被害からのレジリエンス、環境再生、生物多様性の炭素への影響を考慮し、企業がどうやって炭素を管理するべきか、“カーボンマネジメント”のためのビジョンや指針を示している。
ネットゼロ実現までの全体の道のりをみると、ステップ1でBIMのスタンダードISO 19650やデジタルツイン、AIを用い、情報の管理方法やデータ基盤を整備する。ステップ2では、CO2算出量の測定や査定の指針となるPAS 2080に基づき、カーボンマネジメントに取り組み、その先に最終目標のネットゼロが達成される。
両氏の話を踏まえ、BIMを基軸としたサステナビリティ目標の達成までの詳細については、国内外でのトレンドなどを交え、仁井田氏が解説した。
BIMは、Building Information Modelingのうち、Information(情報)を管理する仕組みだが、仁井田氏の感覚では国内でそこまで使っている例はまだ少数で、デザインツールやシミュレーションツールの意味合いがまだ強い。本質的なBIM導入には、「Technology」「Process」「People」の3要素がカギだと捉えている。このうちTechnologyはBIMのソフトウェアやハードウェアを指し、ISO 19650でも示しているBIMに特化したワークフローとなるProcessは特に重要で、BSIがBIMの規格を作るきっかけにもなった。Peopleも、「BIMユーザーがどう使うかといったBIMの規格に対する知識やスキルも人材の観点では外せない。こうした3本柱がないと、グローバルスタンダードに沿ったBIMの本当の意味での活用は難しい」(仁井田氏)。
ではBIMで何ができるのかと言えば、生産性や資産価値の向上、コミュニケーションとコラボレーションの強化、省エネと廃棄物の削減、エネルギー使用量の削減と環境配慮、DfMA(Design for Manufacture and Assembly:製造組立容易性設計)などが挙げられる。さらに、現在グローバルでは“BIM Driven Sustainability”として、「Energy」「Water」「Waste」「Quality」の4つの取り組みに注目が集まっている。
その1つEnergyは、設計前段階で使用する部材や製品エネルギー量が事前に把握できるBIMのメリットで、建設生産プロセス全体でエネルギー使用量が最適化されたり、ローカーボン材料の使用を増やしたりなどが想定される。プラスαで、高品質材料の採用による長寿命化、建設期間の短縮で作業員自体の負担軽減も見込める。
Waterとは、BIMと関係がないように思えるが、水の消費量をBIM活用で最適化する試みだ。BIMモデルに水の供給ラインや排水ライン、設備、IoTセンサー、メーターといった情報を統合し、水の消費量シミュレーションで最適な給水/排水設備の検討などが考えられる。
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