東急建設は、建設業界の2024年問題打開に向け、建設現場を3D LiDARカメラで手軽にデジタルツイン化するMatterportのソリューションを本格導入した。
米Matterportの日本法人マーターポートは2023年12月4日、東急建設が土木分野でMatterportのデジタルツインソリューションを本格導入し、現況調査、出来形管理、関係者とのコミュニケーションや報告などの業務で業務効率化を実現したと発表した。
渋谷や東急線沿線の開発で培ったまちづくりのノウハウを生かし、建設事業を主軸に幅広い事業を展開する東急建設は、建設現場のサポートや新技術の試行などを担当するICT推進グループは、常に最先端技術に関する情報収集を行う中でMatterportのデジタルツインプラットフォームを選定した。
その理由について、地上型レーザースキャナー(TLS)は操作とデータ処理に専門知識を持つ技術者が必要となる一方、Matterportは操作の簡便性に優れ、現場にいる誰もが扱え、点群データや写真画像が迅速に取得できることを挙げる。ソフトウェアのインストールも不要で、関係者の誰もがブラウザ上でアクセスし、高精度で空間内の寸法を測距できるため、出来形管理のリモート化が実現する。
従来、出来形管理業務は、発注者の立ち合いの準備として、安全の徹底や調整に工数と時間を要し、受け入れ人数が限られていた。デジタルツインの活用で、現場への訪問回数を削減し、業務効率化がもたらされる。
デジタルツインしたデータ内では、付箋のように図面などの資料や動画を貼り付けられる「タグ機能」を用いれば、デジタルツイン上に図面などの資料をデジタルツインに埋め込み、本部と現場、設計者と施工者、施主企業との間で、いつでもどこからでも確認、照合、報告が行える。「ノーツ機能」では、デジタル空間上で施主と非同期コミュニケーションが実現する。コミュニケーションの円滑化や手戻り防止によって省力化や業務効率化がもたらされる。
現場導入では、駅ナカから駅周辺の街中まで、屋内外にわたる鉄道関連の現況調査に利用。Matterport導入で、スキャン業務は専門技師のみならず現場の一般作業員が行えるようになり、データ取得の迅速化や業務効率化につながった。
1箇所あたりのスキャン時間は、一般的な地上型レーザースキャナー(TLS)の約300秒に対し、Matterportシリーズ初のLiDARを搭載した直射日光下の屋外にも対応する3D LiDARカメラ「Matterport Pro3」は約20秒と従来の15分の1の時間で済む。取得したデータは、Matterportのプラットフォーム上で、全自動合成されるため、スキャンしてデータをアップロードするだけ完結する。
東急建設の土木部門ではこれまで、360度カメラによるパノラマ写真画像と、地上型レーザースキャナーによる点群データ取得を併用していた。360度カメラは技術者以外の担当者も使用していたが、レーザースキャナーによる点群データの取得は、限られた人数しかいない専門技師を現場に派遣しなければならなかった。その点、Matterportの操作はシンプルかつ直感的なため、現場にいる一般の作業員でも扱え、パノラマ写真画像と点群データを同時に取得する。
東急建設 土木設計部 ICT 推進グループ 課長代理 和田勝利氏は、「新技術の導入や定着は容易ではない中、Matterportは、現場から希望の声が上がり、その現場の成功が波及する好循環で導入が進んでいる」と話す。
東急建設 土木部 監理技術者 中林拓真氏は、「現場のスキャン時間は短縮し、全関係者とのコミュニケーションが迅速化/効率化することで、現場は今まで以上にコア業務に集中することが可能になった」と効果を語る。
土木部門では、Matterportを2024年問題対応の切り札と位置付け、現場導入を加速させている。
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