蟹澤氏は、「CCUSを建設職人の証として、CCUSの登録がなければ職人を名乗れない、もしくは現場に入場できないようにしないといけない。CCUSは優良な企業の証。業界内外でも、CCUSで評価された良い職人がいる会社として、社会的に評価されるようにならなければいけない」と提言する。
建設費が安く抑えられれば良いと考えるのではなく、発注者側の意識改革も求められる。CCUSの認証を持つ職人を使い、法令順守や生産性向上に努める建設会社は、おそらく発注者のSDGsやESGといったトレンドにも合致するはず。蟹澤氏は、こうした建設業界の内情は、一般には知られていないため、業界側が発注者側にも訴えていく必要性を示した。
建設業を将来につなぐには、担い手を確保することが必須となる。蟹澤氏は、そのために生産性の向上は不可欠だと強く訴求する。生産性の低い仕事は賃金も低いため、たとえ新しい労働者が入ってきても定着しない。
ここでいう生産性とは、経済的な生産性である「付加価値労働生産性」を指す。労働生産性は、分子を「付加価値額」、分母を「労働者数×労働時間」とする式で表せる。問題なのは、建設業における労働生産性が日本では低く、製造業の半分程度しかないことだ。
蟹澤氏は、建設業の生産性を上げる上で重要なのは「稼働率」だと指摘する。稼働率は、所定の作業時間のうち、実働時間がどのくらいあるかを示した率。建設業であれば、8時間のうちにどれぐらい動いているかを示すのが稼働率となる。蟹澤氏の調査では、良くて7割、平均すると5割ほどと建設業の稼働率は低い。
建設業の稼働率が低いのは、作業していない非作業や無駄な作業が多いからだ。特に、内装や設備などの工事で手待ちや手戻りの時間が多く、全体のスケジュールも見通せない。そのため、職長が翌日の作業が可能かどうかを調べるためだけに、現場に来るような非効率なことも頻発している。
蟹澤氏は、労働生産性が落ちる理由として、「熟練者不足に加え、標準化も足りていない」と話す。建設業の仕事は、同じ会社の中でも水平展開ができない。一つの工事で工期の短縮や高い利益を出せる人材がいても、そのノウハウを他の工事に応用できない側面がある。
さらに、職種が細分化されすぎている問題もある。建設では、細かい職種ごとに別の会社が請け負っているので、作業間で手待ちが発生しやすい。前の職人の作業が終わらないと次の職人が作業を始められない“直列工程”が前提で、全体として作業の空白時間が生まれやすい。他にも、工程の計画や管理が1日単位であること、請負を前提とし、さらにその構造が重層化していることなど多くの課題がある。
蟹澤氏は「DXを使って現場を見える化し、無駄な重層化や不確実な情報伝達を改めるべき」と話す。
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