“新国立競技場”設計BIMの実践がArchicad新機能開発のヒントに!日建設計とグラフィソフトジャパンの挑戦Building Together Japan 2022(3/4 ページ)

» 2023年08月09日 11時21分 公開
[加藤泰朗BUILT]

温熱環境をBIMによるシミュレーションでビジュアル化

 さらに恩田氏は、環境デザインでもBIMを活用した。中禅寺湖面から吹く風を建物内部のスパイラル空間に沿って取り込めるよう、気流と温熱のシミュレーションし、「ウインドキャッチ」となる屋根の形状や各個室の窓の大きさや位置などを検討したという。恩田氏は「感覚ではなく、シミュレーションに基づいて最適な場所を決めた。温熱環境をビジュアル化することで、クライアントの理解も進んだ」と、BIM活用の効果を評価した。

気流と温熱のシミュレーション 気流と温熱のシミュレーション
建物の特徴としては、中庭に湖水を引き込んでいることにある。その計画が建物内部の温熱環境に与える効果についても、BIMを活用してシミュレーションした。水を引き込む効果をビジュアル化して、クライアントの理解も進んだ 建物の特徴としては、中庭に湖水を引き込んでいることにある。その計画が建物内部の温熱環境に与える効果についても、BIMを活用してシミュレーションした。水を引き込む効果をビジュアル化して、クライアントの理解も進んだ

 他にも、建物の構造が複雑で、施工図の作成に通常より手間がかかることを想定し、現場が理解しやすいようにBIMで多くの断面を作成し、2D変換への負担を減らすなど工夫も凝らした。

新宿住友ビルのリノベでは意匠・構造・設備がBIM連携

 2件目の事例は、「新宿住友ビル_リノベーションプロジェクト」。恩田氏はチーフという立場でプロジェクトに参加し、社外および社内とのコラボレーションにBIMを活用した。

新宿住友ビル_リノベーションプロジェクト。建物周囲にガラスの大屋根をもつアトリウムを増築する計画 新宿住友ビル_リノベーションプロジェクト。建物周囲にガラスの大屋根をもつアトリウムを増築する計画

 リノベーションの内容は、ビル周囲の屋外スペースに、ガラスの大屋根をかけるというもの。全天候型アトリウムを創出することで、西新宿に賑(にぎ)わいを取り戻す構想だ。多面体のガラスからなるアトリウムの大きさは1万1000平方メートル。恩田氏は、「日建設計でもこの規模のアトリウムを過去に設計したことがなかったため、BIMを最大限に活用し、意匠・構造・設備が連携して設計にあたった」と説明する。

 屋根は、構造設計者と連携しながらBIMモデルを使って架構を検討した。意匠設計者が簡単なモデリングをして、それをもとに構造設計者が「MIDAS」で構造を解析し、スタディーを重ねた。その結果、当初はダブルレイヤーのトラス梁で計画していた屋根を、シングルレーヤーに変更し、部材数を減らすことに成功した。

アトリウムにかかる大屋根の構造システムの検討 アトリウムにかかる大屋根の構造システムの検討

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