清水建設は、建設DXに向けた現場業務のデジタル化や標準化推進を目的に、日本オラクルの「Oracle Cloud Infrastructure」を導入した。独自にモバイルアプリケーションやWebアプリケーションを開発し、建設現場の特別安全協議会に関する業務を効率化することに成功した。
日本オラクルは、清水建設が建設DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた現場業務のデジタル化や標準化を目的に、オンプレミス環境をそのままクラウドへ移行できる次世代インフラストラクチャ「OCI(Oracle Cloud Infrastructure)」を導入したと2022年9月26日に発表した。
清水建設は、2021年7月に策定された中期デジタル戦略2020「Shimzデジタルゼネコン」で、「ものづくりを支えるデジタル」を掲げている。その将来ビジョンに基づき、書面でのやり取りや属人化された業務プロセスが多々存在する建設現場で、デジタル化を進め、協力会社との連携を含む効率化も推進して、将来的には業務データの集約や利活用による建設DXを実現するためにOCIを採用した。2021年10月には、OCI上でのシステムやアプリケーションの開発に着手し、2021年11月には建設現場で利用を開始しており、2022年9月26日時点で9カ所の現場に適用している。
現場導入にあたって、建設現場で協力会社と一体となって定期的に行う安全管理業務として、月次で開催される「特別安全衛生協議会」関連の業務を対象に、デジタル化と標準化から着手した。特別安全衛生協議会は、各建設現場で、最大で数百社に及ぶ協力会社の参加のもと、作業間連絡調整などの情報共有と災害の未然防止を目的に開催している。これまでは、協議会開催の招集、出欠確認の連絡、実施、報告書の承認、保管までの一連の業務はメール、FAXなどで行っていた。しかし、書類は紙ベースで作成、保管されており、現場の従業員と協力会社の作業時間の負担となっていた。
そのため、清水建設では、業務フローを整理し、PCやスマートフォン上での直感的なアプリケーションからの入力、確認と関連データのシステム上での保管を可能にすることで、業務のデジタル化と標準化に取り組んだ。
具体的には、日本オラクルのコンサルティング部門の支援のもと、OCIで提供されるローコード開発ツール「Oracle Application Express (APEX)」用いて、モバイルアプリケーションやWebアプリケーションを開発。また、自律機能を用いてデータベース構築や運用管理の負荷を軽減する「Oracle Autonomous Data Warehouse」で、アプリケーションから送信されたデータを統合して一元化している。さらに、「Oracle Analytics Cloud」でデータの可視化や進捗確認などにも取り組んでいる。開発期間は、「Oracle Autonomous Data Warehouse」の自律機能によるデータベース設定や「Oracle APEX」のローコード開発により、1カ月で本番環境を構築したという。
清水建設 土木技術本部 イノベーション推進部 柳川正和氏は、「既に利用が始まっている現場では、毎月開く協議会の準備から開催、帳票作成までの業務時間が大幅に短縮され、従業員の生産性向上にもつながっている。今後、全国の建設現場での導入を順次進め、将来的には施工管理などをはじめとする建設現場で手作業、紙ベースで管理している帳票、作業記録、報告書なども、データとしてシステム内に蓄積していく。それらのデータ活用を通して、さらなる業務効率化と従業員の生産性向上を進めていく計画だ」とコメント。
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