導水式複合パッカーを用いてトンネル工事の多量湧水対応注入法を開発、東急建設導入事例

東急建設は、カテックスとともに、開発した導水式複合パッカー「H2パッカー」を用いて、断層破砕帯や河川近接施工などの多量湧水に対応する注入方法を確立した。今回の注入方法は、切羽からの多量出水による掘削中断と遅延を回避し、地山注入改良時の施工性を改善する他、切羽の止水と減水を実現する。

» 2022年09月26日 07時00分 公開
[BUILT]

 東急建設は、山岳トンネル工事における補助工法の分野で実績を持つカテックスとともに、開発した導水式複合パッカー「H2パッカー」を用いて、断層破砕帯や河川近接施工といったトンネル工事の多量湧水に対応した注入方法を確立したことを2022年9月12日に発表した。

H2パッカーの発売は2023年4月頃を予定

 トンネル工事では、多量の湧水に遭遇するケースが多数あり、水位の低下が望めない時には、水抜きボーリングで地下水位を下げるのに多大な時間がかかっていただけでなく、坑内の排水や濁水処理設備に負担がかかる。一方、多量の湧水を伴う地山改良や止水と減水を目的とした注入を行うと、湧水とともに注入材が流出し、河川が汚染することもある。

 解決策として、東急建設は、カテックスと共同で、多量の湧水下でも確実な地山改良注入が可能で、環境へも配慮した止水ウレタン利用の導水式複合パッカー「H2パッカー」を開発した。

 H2パッカーは、長尺鋼管先受け工の多量湧水対応型ウレタン注入用止水パッカーで、ゴム膨張型のパッカー部分と止水ウレタンが滲出する布製パッカー部分で構成され、先受け鋼管内にあらかじめ設置する注入管(インサートホース)をパッカーの外側に配置しても注入機能とパッカー機能を両立し、口元で止水性を発揮する。

導水式複合パッカー「H2パッカー」の構造 出典:東急建設プレスリリース

 既に、東急建設は、カテックスとともに、H2パッカーの実証実験を行っている。実証実験では、1つの穴で1分当たり250リットルの水が沸く多量湧水下で、H2パッカーを活用し、長尺鋼管先受け工の注入作業を行い、注入材の流出を抑制するとともに、地山改良や止水、減水の効果を確認した。

 さらに、ゴムパッカー部の注入圧による鋼管密着性と布製パッカー部から滲出させた止水ウレタンが、水と反応し膨張することで注入管(インサートホース)周囲の狭小部にも入り込み、止水性を発揮することが分かった。

実証実験での湧水状況(左)と止水注入状況(右) 出典:東急建設プレスリリース

 加えて、注入管(インサートホース)から止水ウレタンの注入を開始し、H2パッカーの導水管部分から湧水とともに注入材が漏出し始めたら、導水管の口元に取り付けられたボールバルブを閉じることで漏出を止め、効果的に地山に注入ができることも確かめた他、湧水圧や注入圧などによる一定の圧力が作用しても、導水式複合パッカーが抜け出すことなく注入可能なことも判明した。

 また、多量湧水が発生した実際のトンネル工事で、H2パッカーを利用することにより注入作業時の口元処理や薬液漏出と流出対応で作業性を改善しただけでなく、湧水とともに注入材が流出することもなかった。

 なお、今回の工法は、「パッカー及びそれを用いた地山補強工法」として2022年5月に特許を取得しており、湧水を制御しながら止水ウレタンを注入するH2パッカーは2023年4月頃に発売する予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.