大林組は、ハイブリッド木造建築の施工にCLTをユニット化することで品質向上と工期短縮を実現した「CLTユニット工法」を開発した。
大林組は、ハイブリッド木造建築の施工にCLT※1をユニット化することで品質向上と工期短縮を実現した「CLTユニット工法」を開発し、宮城県仙台市で保有する仙台梅田寮の新築工事に適用したことを2022年8月30日に発表した。
※1 CLT:CLTは板の層を各層で互いに直交するように積層接着した厚型パネルのことで直交集成板ともいう。
同社はこれまで、持続可能な社会の実現を目指して、従来の構造より建築物施工時のCO2排出量が少なく、長期間にわたりCO2を建築物に固定する木造/木質化の建築物に取り組み、建築物への木材利用の普及と促進を図っている。
2022年3月には、神奈川県横浜市で日本初の高層純木造耐火建築物「Port Plus(大林組横浜研修所)」を完成させるなど、木造建築に関する技術開発やノウハウの蓄積を行ってきた。一方、構造材であるCLTパネルの壁と天井を工場でユニット化することで高品質かつ短工期での施工を実現するCLTユニット工法を開発し、仙台梅田寮の新築工事に適用した。
CLTユニット工法は、CLTパネルを工場で事前に組み立てて搬入することで、現場での作業はユニット同士の接合のみとなるため、S造と比較して1.5カ月、現地でパネルを組み立てる工法に比べて1カ月の工期を短縮する他、工場での組み立てにより高い品質を保てるだけでなく、現場作業員の省人化や工事中の騒音と振動の低減に貢献する。
さらに、通常、壁や天井、床で四方を囲う形とするユニットを、あえて壁と天井のみを組み立てた門型の形状とすることで、ユニットを4トントラックで運べるサイズ(幅2200ミリ、高さ2800ミリ、長さ6000ミリ)に抑え、大型車両が通れない車両規制道路を利用した搬入を可能とした。
これにより、日本では道路運搬規制によって実現が難しいとされる「PPVC※2」の実装を達成するだけでなく、ユニット工法に適している集合住宅やホテルなど、同じ形状の部屋が連続する建物用途への木材利用を推進する。
※2 PPVC:自立型ユニット(壁、床および天井の仕上げを含む)をオフサイトで製造し現場で設置する工法。
なお、CLTユニット工法では、壁と天井パネルの接合には、木材をかみ合わせて接合する「あられ組」に、木栓をすることで緩みを防止し、より強固に結合させる「改良あられ組」を開発し導入することで、木材をつなぐ金物が不要となり、コストを減らした。
使用するユニットの加工では、BIMモデルと加工機をデータ連携させることで、製作図を介さず木材の加工を行う。ユニットを現場に据え付ける際には、ビジュアル工程管理システム「プロミエ」とクレーンを連携させることで、部材ごとの据え付け日程と施工実績を登録し、効率的な工程管理を行うだけでなく、BIMモデル内の数量情報と連携させ、出来高管理も実施する。
仙台梅田寮は、1階がRC造で、2〜3階を木造とした木造ハイブリッド構造としており、施設全体で925平方メートルの国産スギ材を使用することで、536トンの二酸化炭素を建物のライフサイクルを通じて固定する見通しだ。
加えて、施設内は温かみがある木の住まいとすることで、利用者の健康と快適性を高め、「ZEH」と「WELL」認証の取得を目指している。
仙台梅田寮は、1階RC造(一部S造)や2〜3階木造(一部RC造)、壁式構造で構成される地上3階建てで、延べ床面積は3677.47平方メートル。計画地は宮城県仙台市青葉区梅田町一丁目で、敷地面積は2528.04平方メートル。用途は寄宿舎で、工期は2022年3月〜2023年3月を予定している。
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