大成建設は、2020年に開発した防振浮床と同じ炭素繊維補強樹脂(CFRP)部材を壁フレームに用いた防振遮音構造の「T-Silent CFRP Frame」を開発した。さらに、同社が神奈川県横浜市戸塚区技術センターに新設した音響実験棟の無響室へT-Silent CFRP Frameを適用し、その優れた施工性と高い遮音性能を確かめた。
大成建設は、2020年に開発した防振浮床と同じ炭素繊維補強樹脂(CFRP)部材を壁フレームに用いた防振遮音構造の「T-Silent CFRP Frame」を開発したことを2022年5月11日に発表した。
スタジオや音響実験室など、静かさが必要な施設では、内部からの音漏れや外部からの音を遮断するために高い遮音性能が求められる。解決策として、こういった施設では空気や建築部材を伝搬し室内に生じる音の発生を低減させるため、建物の構造とは別に、防振ゴムによって支持した空間を設けて音の振動を絶縁する防振遮音構造を採用する。
この場合、鉄骨材で空間フレームを作り、そこに壁材を設置し施工するが、通常用いる鉄骨材は重量があるため、人力での運搬や設置が困難となる。とくにリニューアル工事で建物内へ防振遮音構造を採用する際には、揚重機を使えないなど、施工上の制約から計画の見直しなどが必須なケースもあった。
そこで、大成建設は、軽量なCFRP部材※1を用いて、優れた遮音性能を持ちつつ施工性の向上を実現する防振遮音構造のT-Silent CFRP Frameを構築した。
T-Silent CFRP Frameの防振遮音構造は、軽量であり施工上の制約を受けることが少なく、必要とされる遮音性能を容易に確保するため、音楽スタジオなど、さまざまな規模の空間への適用が可能。
また、無響室の構造フレームに鉄骨部材を使用した場合は、これまで施工に2日間を要していたが、T-Silent CFRP Frameを使用したケースでは施工時間を従来の約3分の1となる5時間に短縮した。
大成建設が神奈川県横浜市戸塚区技術センターに新設した音響実験棟の無響室にT-Silent CFRP Frameを適用した際には、長さ6メートルのCFRP部材を使い、重さを17キロとし、1人で容易に持ち運べる重さに仕上げた。このため、一般的に防振遮音構造のフレームとして使用される鉄骨部材の重さと比較して11分の1と軽量化を達成し、揚重機などを使用する手間をなくした。
今後は、CFRP部材を用いた防振遮音構造フレームの特性を生かし、これまで施工が困難だった、静粛性を必要とする建物内の新築とリニューアル工事に有効な施工法として、提案していく。
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