大林組は、コンクリートに木質バイオマスを添加することで、コンクリート構造物に長期間CO2を固定する「リグニンクリート」を開発した。今後は、汎用性の高いコンクリート2次製品への適用を進め、コンクリート構造物の施工に使用することでCO2を固定化し、環境負荷の低減に貢献する。
大林組は、コンクリートに木質バイオマス※1を添加することで、コンクリート構造物に長期間CO2を固定する「リグニンクリート」を開発したことを2022年5月18日に発表した。
※1 木質バイオマス:再生可能な生物由来の有機性資源(化石燃料は除く)であるバイオマスのうち、木材から成るもの。樹木の伐採や造材の時に発生した枝、葉といった林地残材、製材工場などから発生する樹皮やのこくずなど、住宅の解体材や街路樹の剪定枝などを指す。
樹木は、成長過程で光合成によりCO2を吸収するため、木材の利用は吸収されたCO2を固定することで脱炭素化に貢献する他、「使う、植える、育てる」というサーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点から、木材は再生可能な資源としても注目されている。
こういった点を踏まえて、大林組は、木質バイオマスをセメントミルクで固めた「チップクリート」を用いた法面緑化の実用化(施工実績21件、延べ施工面積4万4000平方メートル)を行っているだけでなく、主要構造部(柱、梁、床、壁)の全てを木造とした高層純木造耐火建築物の建設など、木材利用の実績を積み重ねてきた。
今回は、木材利用を促進させるため、日本製紙やフローリックと共同で、木質バイオマスである粉体状のリグニン※2を添加するコンクリートのリグニンクリートを開発した。
※2 リグニン:紙の原料であるパルプの製造工程で発生する木材の約3割を占める主要成分の1つ。
リグニンクリートは、リグニンをコンクリート材料として使用することで、樹木が吸収したCO2をコンクリート構造物に長期間固定する。
具体的には、通常コンクリートの製造時には1立方メートル当たり約270キロのCO2を排出するが、リグニンは1キロ当たり約2.4キロのCO2※3を吸収し、リグニンクリートは、1立方メートルのコンクリートに100キロのリグニンを添加しており、1立方メートル当たり約240キロのCO2を構築物のライフサイクルを通して、長期間安定してコンクリート中に固定可能。
※3 1kg当たり2.4kgのCO2:水分を完全に飛ばした粉体状のリグニンにおける炭素含有分析値から換算した試算値。
さらに、解体し骨材に再利用する場合にも、CO2は固定された状態を維持する。加えて、通常のコンクリートと同様の圧縮強度と材料性状を備えているため、幅広い構造物に適用できる。
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