三菱電機は、室内における空気の流れ(気流)や温度分布を予測して快適な室内環境を実現する「ビル向け快適気流制御技術」を開発し、同社が神奈川県鎌倉市大船で保有するZEB関連技術実証棟「SUSTIE」で気流制御技術を用いた暖房試験を行い、有効性を確認した。今後は、さらなる効果検証のために、今回の実証実験とは異なる条件でも評価を行い、2024年度以降の実用化に向けて開発を進める。
三菱電機は、室内における空気の流れ(気流)や温度分布を予測して快適な室内環境を実現する「ビル向け快適気流制御技術」を開発したことを2022年4月14日に発表した。
近年、ビル用空調市場では、新型コロナウイルス感染症などの影響で、これまで以上に健康や快適性に配慮した空間を構築する製品へのニーズが高まっている他、室内の気流に対する意識も高まり、気流の可視化やユーザーが望む室内環境を構築する気流制御が求められている。
しかし、気流は、部屋の形状や機器の配置といったさまざまな条件で変化するため、センサーでの把握が困難で、これまで温度ムラや風あたりなどで不快感が生じるといった課題があった。
そこで、三菱電機は、ビル向け快適気流制御技術を開発した。ビル向け快適気流制御技術は、気流解析を活用し室内全体を快適とする「気流制御技術」と「気流を可視化するソフトウェア」で構成される。
気流制御技術は、部屋の形状や条件に応じて変化する室内の気流と温度分布を気流解析で予測し、最適な吹き出し条件で空調機器を運転することで温度ムラや風あたりなどの不快感を低減して、居住者の満足度やビルの付加価値を高める。
具体的には、部屋の形状と室内機の位置情報を持つ3次元モデルを生成し、吹き出し角度、風量、発熱量などを変化させた複数条件の気流・温度分布をCFD解析で予測。加えて、空調機のセンサー値を基に現在の状況に近い条件で解析した結果を選び、ユーザーが必要としている室内環境を構築し、吹き出し条件を求めて制御する。
上記の効果で、複数の室内機で実環境に適応した気流制御が可能になるだけでなく、気流解析により複雑な気流・温度分布を予測できるため、足元や障害物の影になるエリアも考慮し、室内全体が最も快適となるように風量・風向を制御。
三菱電機では、同社が神奈川県鎌倉市大船で保有するZEB関連技術実証棟「SUSTIE」で気流制御技術を用いた暖房試験を行った結果、窓からの冷気で足元の温度が上がりにくい窓際エリアの上下(床上0.1メートルと床上1.7メートル)における温度差で改善効果を確認し、上下温度差が3度以上となる時間帯を現行制御の163分から3分に短縮することも確かめた。
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