脱炭素社会実現のカギ「リチウムイオン電池」と「水素」、その動的解析と今後の展開脱炭素(2/3 ページ)

» 2022年01月04日 06時00分 公開
[中村のぶ子BUILT]

水素エネルギーの低炭素化を実現する可能性

 さらに蓄電池には課題として、「体積当たりのエネルギー量(エネルギー密度)が小さい」がある。飛行機やバス、トラックのように大規模エネルギーを利用し、急速にエネルギーを補充する場合は、リチウムイオン電池を使用するとサイズが大きくなってしまい、不向きとなる。

 そこで注目したいのが、リチウムイオン電池よりもエネルギー密度の高い水素エネルギー※2 下記の補足資料を編集部で追加。「水素はガソリンのように燃焼して使用でき、CO2を出さないので、簡単に置き換え可能だ」(折笠氏)。

 現状では、水素の製造の際にCO2が発生するが、風力電力や太陽光電力など再生可能エネルギーによる水の電気分解により、CO2を排出せずに水素の製造が可能となる。「水素エネルギー利用は、90%以上の1次エネルギーを海外化石燃料に依存する日本のエネルギー供給構造を多様化させ、大幅な低炭素化を実現する可能性がある」(折笠氏)。

 近年、リチウムイオン電池とともに、脱CO2の切り札として水素エネルギーの注目度は高まっており、資源エネルギー庁は火力発電、乗用車・貨物車、鉄鋼・石油製造などの産業分野で水力エネルギーの活用を進める方針だ。同様に、新エネルギー産業総合開発機構(NEDO)も水素社会構造の技術開発事業に着手している。

高性能の蓄電池・燃料電池開発のための学術研究

 2021年度の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞した折笠氏の研究テーマでは、最終目的は、高性能でコストが低く、耐久性の高い蓄電池・燃料電池を開発で、カーボンニュートラルに貢献することにある。こうした技術開発には、「デバイス作動下での電池のメカニズムを明らかにすること」が不可欠であるという。

 そのためには、電気化学や固体化学、放射光化学の境界領域で、新たな学問分野を構築する必要があり、「学問と産業の領域の橋渡し」をするような研究を目指しているとした。

電池を作動しながら反応のメカニズム解析に成功 

 代表的な蓄電池のリチウムイオン電池では、界面反応、結晶相変化に加えて、時間と空間が複雑に絡み合った反応が起こっており、「研究開発でどこをターゲットにしたらよいか分からない」という状態にある。

 そこで折笠氏は、電池を作動させながら、透過能が強いX線を試料に透過させ、個々の反応を可視化した状態を観測した。つまり、「電池を解体せずに、個々の反応のメカニズムを観察する」方法を編み出したことで、よりスマートな研究開発へとつながると折笠氏は語った。

電池を作動させながら反応を観察

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