大成建設は、アクティオとともに、山岳トンネル工事で効率よく安全に鋼製支保工を建て込む工法「T-支保工クイックセッター」を開発した。新工法は、支保工の建て込みに適用することで、遠隔操作により切羽近傍での人力作業が不要となり、切羽から土砂・岩が剥がれ落ちる「肌落ち」による災害を防げる。今後、大成建設は、山岳トンネル工事での支保工建て込み作業の標準工法として、T-支保工クイックセッターの適用を推進する。
大成建設は、アクティオとともに、山岳トンネル工事で効率よく安全に鋼製支保工を建て込む工法「T-支保工クイックセッター」を開発したことを2021年5月13日に発表した。なお、新工法は、大成建設が開発を進めているトンネル切羽作業の自動化・機械化の要素技術に位置付けられる。
これまで支保工の建て込み作業は、オペレーターによる支保工把持装置「エレクター」の操作と作業員による人力での位置調整により行われてきた。なかでも、支保工の天端締結や位置合わせ作業は切羽近傍での作業となるため、作業員が肌落ち災害に巻き込まれる危険性があった。
そこで、大成建設は、切羽に立ち入ることなく、遠隔からエレクターの操作を行いスムーズに施工できるT-支保工クイックセッターを開発し、国内の道路トンネル建設現場で建て込み作業の実証試験を実施し、作業効率と安全性を確認した。
T-支保工クイックセッターの作業手順は、建て込み機の準備・設置後に、支保工同士の天端継手版を締結し、ラインレーザーを用いて支保工建て込み位置への誘導と位置の調整を行い、位置確定させて建て込みを完了する。
特徴は、バネを組み込んだ爪構造のワンタッチ式継手ボルトを片方の天端部に設置することで、もう一方にある支保工継手の孔に差し込んだ際に爪が開いて締結可能な方式を採用している点。また、トンネル横断方向にラインレーザーを照射し建て込み位置を見える化することで、エレクター操作だけで支保工の縦断方向位置を合わせられ、作業効率の向上が図れる。
さらに、天端継手板の締結やラインレーザーの状況を確かめられるモニタリングカメラを作業用バスケットに配置し、切羽から10メートル程度離れたエレクターの操作位置からでも施工状況を見られるため、作業時の安全性がアップする。今回の工法で使用するワンタッチ式継手ボルト、ラインレーザー、モニタリングカメラは、現場導入されている既存エレクター搭載機器の種別を問わず後付けに応じているため汎用性が高い。
トンネル工事現場の実証試験では、作業員間での業務内容のチェックなどが不要となり、オペレーターが1人で業務に集中しやすく、従来方式と比較して施工時間を約30%短縮することが明らかになった。加えて、これまでは5人で実施していた支保工の建て込み作業を切羽近傍に作業員が立ち入ることなく、オペレーター1人で安全に行えることも分かった。
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