連載
» 2021年06月01日 10時00分 公開

【最終回】発注者のニーズを知り、要求条件をまとめる(下)−ブリーフィング/プログラミングの重要性−いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(12)(3/5 ページ)

[成田一郎(公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会 専務理事),BUILT]

「生きることを楽しむ家」

 東京のある施設内の敷地に建設した12坪ほどの小さなモデルルームは、軽度の脳性麻痺(まひ)を患っている20歳の女性の住まいを設定している。その女性は、できるだけ人の世話にならずに自立を目指し、積極的に生きようとしている明るい女性である。しかし、設計者としての私は、脳性麻痺の女性の気持ちが分からない。女性の気持ちになれるように、何度か施設を訪れ、脳性麻痺の方の症状を見て、シナリオを作成した。しかし、これがなかなか難しい。そこで、その女性になったつもりで、どんな家に住みたいか、詩を書き、それらを、施設の院長先生にも見てもらい、内容を確認し、それを繰り返し収斂(しゅうれん)させて、一つのコンセプトとした。それを要求条件に盛り込み、脳性麻痺の人にとっても介助する人にとっても、快適に生活できる家を設計したのである。

 詩の一部を紹介しよう。時代の違いも感じながら読んでいただきたい。詩のタイトルは、「私は二十歳(はたち)」。

私は二十歳(はたち)。

なんだって自分でやりたいのです。

普通の人のように、普通の人以上に、生きていることが楽しいと思うし、

楽しく生きていたいのです。

母は、六十。

年齢より、随分若く見えます。

いつも明るくて、多少若めの服装も良く似合います。

でも、母は、自分の人生を、私にくれているようです。

それはとても嬉(うれ)しいのですが、母にも母の時間をつくってあげたいのです。

私の世話だけで、終わって欲しくないのです。

私は二十歳。

もう大人です。

自立しなければなりません。

ほんの少しだけ介助があれば、なんでも自分でやれます。

やってみたいのです。

………(中略)

明るく、サンサンと陽の当たるテラスで日光浴ができ、

思いっきり手がのばせて、

普通の人以上に普通に、

そして自然な感じで生活ができる、

そんな生き方を支えてくれるような家が、私は欲しいのです。

シナリオ事例。脳性麻痺の女性のための小さな住宅計画

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.