最新のFMに触れる、そして学ぶ方法(上)−Webセミナーに参加する−いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(9)(2/3 ページ)

» 2021年02月02日 10時00分 公開

◆初日/2月17日(水)の講演

 ここでは、初日の基調講演と特別講演の概要を紹介する。

 基調講演は、日本総合研究所会長と多摩大学長を兼任する寺島実郎氏が登壇する。

 テーマ:「時代との対話:コロナ後の世界とファシリティマネジメント」

 氏の各種の事実情報を集めた資料集は有名である。新型コロナウイルス感染症についても、PCR検査と感染者の関係や他の病気との比較、地球とウイルスと人間との歴史上の時間差を考えると、人類は地球の新参者であり、ウイルスと共生していく覚悟が必要という。

 新しい生活様式にどのように対応し、それをチャンスに変えられるかどうかで今後は決まる。そして、コロナ禍の中で、刻々と変化する国際関係を読み解き、世界の中での日本を考えなければならない。コロナ禍で、考え方や理論が内向きになり、世界への対応を間違ってはいけないという。

 FMも同様で、建物やインフラのハード面の対応だけでなく、ESG投資やSDGsなどの世界の環境問題から働き方改革まで、真に日本が自立していくための大きな転機としてコロナ禍の中でも内向きにならず、冷静に真実を見極めて行動する必要性についてご講演頂く。


 続いて、3人の先生方に特別講演をいただく。

 特別講演の1番目は、早稲田大学 創造理工学部 建築学科教授、空気調節・衛生工学会前会長の田辺新一氏

 テーマ:「2050脱炭素社会とファシリティマネジメント」

 菅首相は、2020年10月に、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想が必要とされる。

 炭素排出をゼロにするカーボンニュートラルを達成するには、住宅や建築物のZEB(ゼロ・エネルギービル)やZEH(ゼロ・エネルギーハウス)の取り組みを促進すること、加えて、脱炭素化のためには新築時だけでなく、既存の建築のライフサイクルを通していかに運用するかが大きな課題。

 脱炭素社会とFMの関係をどのように考えるのか。単に環境的に締め付けられて我慢しながら生活するのでなく、安全で健康的に、そして生産的に働き生活することが大切となる。人類にとって明るい脱炭素社会を目指し、それらによる課題があるが、それを解決することが日本社会の課題解決になり、イノベーションを起こすきっかけとなる。そのような社会の在り方をご紹介いただく。


 2番目の講演は、JFMA特別研究員フェロー・広報委員長で、コクヨ ワークスタイルイノベーション部 主幹研究員の齋藤敦子氏

 テーマ:「ニューノーマル時代の働き方とワークプレース」

 新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより、世界中の人々が新たな世界に直面し、日常のライフスタイルからワークスタイルまで変革を求められている。このコロナ禍で、在宅での仕事の有効性や問題点も指摘されている。一方、センターオフィスに集まる意味、価値、重要性などが問われている。このような状況で、健康(Wellness)や幸福感(Happiness)やイノベーションを求められるオフィスにおいても新たな展開が求められている。これらの問題は全世界的な問題でもあり、気候変動による今後のパンデミックリスクも指摘されており、いずれ忘れ元に戻るという発想ではなく、「感染症によって働く環境の在り方はどう変わるのか」を考えていかなければならない。

 FMとしてどのような視点で、今後のオフィスを構築・運営していくべきか、世界の最先端のオフィスに知見深い齋藤氏にこれからの働き方とワークプレイスについてご解説いただく。


 初日最後の講演は、建築家で小堀哲夫建築設計事務所を主宰し、法政大学教授の小堀哲夫氏

 テーマ:「イノベーションを起こす場づくり」

 今、企業はイノベーションを求めている。イノベーションを起こす原点は「競争」ではなく「共創」である。人々が自然に集まり、コミュニケーションし、アイデアが湧く空間とはどのようなものか。それは特別なものでなく「人間が人間らしく働ける場」だという。

 2013年竣工のROKI(浜松市)の研究開発棟「ROKI Global innovation Center」では共創が行われるワークスペースを、そして2018年に竣工した「NIKKA INNOVATIO CENTER」(福井市)の研究施設では「創発の場」づくりを、そして2020年10月に、虎ノ門ヒルズビジネスタワーの15、16階にオープンした国内最大級のスタートアップの集積拠点「ケンブリッジイノベーションセンター東京(CIC Japan)」と、最新作も含めて、FMにとってのキーワード「イノベーションを起こす場づくり」と新たな時代の働き方について、イノベーションセンターづくりの名手、小堀哲夫氏に、その極意を語っていただく。

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