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» 2020年08月19日 08時00分 公開

西松建設がトンネル覆工再生に応じる“はつり工法”を検証山岳トンネル工事

西松建設は、高度成長期に建設されたトンネル覆工が老朽化していることを受け、道路を供用しつつ限られたスペースでコンクリート補修工事が実現可能かを見極める目的で、2種類のはつり工法を用いて検証を行った。

[BUILT]

 西松建設は2020年7月、矢板工法で建設されたトンネルの覆工を模したコンクリート供試体を使用し、はつり工法の確認試験を愛川技術研究所で実施したと公表した。

試験結果を施工計画の基礎資料に活用

 高度成長期に建設されたトンネル覆工は、矢板工法で建設されたものが多く、覆工にひび割れや漏水などの変状が顕在化してきている。対策として、背面空洞の充填(じゅうてん)、止水工、導水樋の設置などが採られているが、湧水量が多く、目詰まりを生じて導水に支障が出ることが多いため、覆工構造の抜本的な改善が求められている。

 改善方法として、既設の覆工コンクリートをロックボルトで補強後に、表面をはつりした上で、防水工や再覆工などのトンネル内空断面を保全した覆工再生が検討されている。しかし、車両の通行を確保した上で覆工再生を行うには、作業スペースに大幅な制限を受けてしまう。

 作業スペースが制限された状態でのはつり作業は、事例が無く施工計画に必要な作業効率などは明確でなかった。そこで西松建設では、「ウォータージェットはつり工法」と「回転ドラム式はつり工法」の2種類のはつり工法で、作業スペースに制限を受けた状態でも適用可能かどうかを試し、作業効率や仕上がり具合を確かめることで、正確な施工計画立案のベースとなる資料にすることとした。

「ウォータージェットはつり工法」(左)と「回転ドラム式はつり工法」(右) 出典:西松建設

 試験では、4000(幅)×2200(高さ)×1500(奥行き)ミリのコンクリート試験体(コンクリート30-12-20N、試験時の圧縮強度41N/mm2)を用い、試験切削範囲は300(幅)×2000(高さ)×100(奥行き)ミリ幅に設定して行った。

 はつり工法は、ウォータージェットはつり工法と回転ドラム式はつり工法の2タイプ。ウォータージェットはつり工法は、高水圧でコンクリートを切削し、コンクリート面に取り付けたレールを基準に、はつる範囲を複数回(セット)往復切削して仕上げる。切削深さは、2本のノズルから噴射される高圧水の衝突点位置で調整。円形の切削範囲をラップさせながら切削するので、試験切削範囲に比べ切削範囲は大きくなるが、広範囲を連続的にはつる場合は支障をきたさない利点がある。

 もう一方の回転ドラム式はつり工法は、切削ビットを装着したドラムを回転させ、コンクリートを切削する手法。支持フレーム内を横移動することで切削範囲を調整し、切削深さは移動用フレーム脚部の伸縮によって行う。

2種類のはつり工法による試験 出典:西松建設

 試験結果としては、今回の試験条件下での両工法の作業効率を確認した以外にも、騒音レベルの違いを明らかにした。また、振動に関しては、ウォータージェットはつり工法では、当初の予想通り、躯体自体の振動がかなり抑えられた。しかし、回転ドラム式はつり工法は、切削機を外部から壁面に押付けて切削するため、振動が発生したという。

 表面の仕上がり具合は、ウォータージェットはつり工法では、コンクリートと切削セット数が仕上がりに関係し、はつり効率と仕上がりのバランスが重要なことが判明した。なお、両工法ともに、表面に浮きや剥離、マイクロクラックは確認されなかった。

2種類の工法による表面仕上がり 出典:西松建設

 さらに今後の深さ管理を視野に入れ、はつり面を3Dスキャナーで測定して可視化。その結果、切削深さは的確に表現できたのと同時に、写真撮影画像との比較から表面の仕上がり状況を捉えられていることが証明された。

 今回の試験では、2種類のはつり工法を選定し、それぞれの特徴や効率について検証した。しかし、実構造物は、使用可能な施工ヤードをはじめ、切削ガラなど廃棄物の搬出・排出方法、排出距離が刻々と変化する。そのため、西松建設では多様な現場条件を考慮した上で、今回得られた情報を基に、最適なはつり工法の選定や組み合わせと管理方法だけでなく、再覆工も併せた覆工再生についても検討を進めていくとしている。

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