「インフラ点検の常識を変える“RaaS”で世界へ」、東工大発ロボベンチャーHiBot CEOに聞くインフラメンテナンス最前線(3/5 ページ)

» 2020年06月15日 10時28分 公開
[石原忍BUILT]

モジュール化と動きの再現性が他に無い優位性

 FloatArmは、ヘビのように細長く、しなやかに動作する独自のモーションコントロールで、狭く見通しが悪い環境下でも高精度に検査する。先端部のモジュールは取り替えられ、ハイビジョンカメラ以外にも、サーマルカメラ、超音波センサー、さらにデジタルツインのベースとなる3次元設備データを取得するLiDARスキャナー、テスト段階ではあるがコーティング機器の装着も検証している。

ヘビ型マニュピレータ「FloatArm」
「FloatArm」のしなやかな動きを可能にする独自開発のモーションコントロール

 LiDARスキャナーの活用は、3Dデータを取るだけにとどまらない。例えば、点検の際に設備の3次元モデルが事前にあれば、ロボットが穴に入る動きを自動でプログラミングするが、仮に用意できなくても、LiDARスキャナーであれば、最初に周囲をセンシングして3Dマップを生成することで、ロボット動作を制御するプログラムに用いることもできる。

 なお、FloatArmは既に、海外の航空機大手メーカーでも試験運用している。旅客機の検査では、主翼の中に人が入り込み、燃料タンクの損傷箇所を昼夜を問わず探しており、ロボットを使うまでは作業員の肉体的な負担は計り知れないものだった。

 導入の決め手となったのは、FloatArmの動作プログラムが、3次元モデルや座標データといった情報とともにHiBotのデータベースに保存されるため、管への侵入経路などのロボット動作が再現可能だったことにある。言い換えれば、1度点検してしまえば、次回調べるときには一から制御プログラムを検証しなくて良いため、結果的に、長期的なスパンでコストを抑制したいクライアントの要求に合致した。

旅客機の点検にも導入されている「FloatArm」
旅客機内部に入り込んで検査している「FloatArm」

 その他の特長についてデベネスト氏は、「足場の設置や解体の手間が無くて済み、重さ30キロなので現場へ持ち運び、その場で組み立てられる利点が、作業スピードが必須な点検業務には、有効な手段となり得る」とする。

 最近、問い合わせが急増しているFloatArmは、まずは航空と化学プラントの分野を対象にしたバージョンアップを2020年夏ごろに予定している。「日本ではロボットというと、ボタンを押せば何でもできるイメージを持たれることが多く、完成までに完璧を求められるため、開発期間に膨大な時間を要する。その点、海外の企業はコスト削減など、目的が明確なため、求めるものに沿った提案がしやすい。いまの限られた当社のリソースを考慮すると、海外にも拠点があることを生かして、先にそこで実績を作り、日本に蓄積した技術を持ち帰ってくる形にしたい」(グアラニエリ氏)。

【BUILTチャンネル】HiBotの点検ロボット「FloatArm」の滑らかな動き

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