西松建設と金沢大学教授の長谷川浩氏は、ピットや薬液貯留槽、水中ポンプ、排水処理装置などの機器で構成される掘削ずりの新浄化技術を開発した。洗浄時間は全体を通して約6時間で、現場の施工サイクルに組み込むことも容易だ。
西松建設は2019年12月3日、金沢大学教授の長谷川浩氏と共同で、ヒ素を含有する掘削ずりの浄化技術を開発したことを発表。この技術は、洗浄液に生分解性のキレート剤などを用いた浸漬式の洗浄処理によってヒ素を抽出除去し溶出を低減する。
近年、掘削する現場では、自然由来の重金属などを含有する土壌・岩石に直面するケースが多くなっているという。重金属などの対策の多くは掘削除去や場外搬出処分に依存しており、現場の条件によっては搬送先(利用先)の確保が困難になる場合もある。このため、現場内での有効活用と、場外での利用促進が望まれており、両方を可能にする無害化技術の確立が求められていた。
今回、開発された技術はこういった問題を払拭(ふっしょく)する。この技術は、西松建設と金沢大学が2015年に共同開発したキレート剤による湿式洗浄(キレート洗浄)を基本原理とし、ヒ素や鉛といった重金属などの溶出量が基準を超える掘削ずりを対象とする。
作業手順は、まず現場にピットを設置し、掘削ずりをピット内で複数の洗浄液に浸たす。重金属などの抽出を行い、溶出量を基準以下に低減し、掘削ずりの有効利用を可能にする。洗浄時間は全体を通して約6時間で、現場の施工サイクルに組み込むことが容易だという。
主要設備は、ピットや薬液貯留槽、水中ポンプ、排水処理装置などで、シンプルな構成で運用が行える。現場で、この技術を適用する場合は、事前に適用性試験を実施し、効果を確認した後、洗浄時間などの詳細条件を決める。その際には、掘削ずりに用いる溶出試験方法および評価基準を関係者で協議の上、決定する。
西松建設と金沢大学は、ヒ素の土壌溶出量0.026ミリグラム毎リットルの頁岩(けつがん)を破砕し、粒径0.5〜4.0ミリに調整後、4つの粒度(0.5〜1.0、1.0〜2.0、2.0〜2.8、2.8〜4.0ミリ)に区分し、この技術で洗浄を実施。結果は、洗浄後全てのサイズでヒ素溶出量は基準(0.01ミリグラム毎リットル以下)を満たしたという。
今後、西松建設は、多様な岩種に適用して知見を積み重ね、実現場に試験適用を行い、完成を目指していく。
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